- アジア
- 特許
2026.01.15
特許部 寺岡 裕芳
2025年12月5日、シンガポール高等法院は、スライド&スイングドアを巡る特許侵害訴訟 Ng Say Keong v Jia Le Aluminium Pte Ltd ほか([2025] SGHC 243)について、特許は有効であるが被告製品は非侵害であると判断する一方、被告らの販売行為については詐称通用(passing off)が成立すると判断しました。
原告は、個人事業主として「S & K Solid Wood Doors(通称SK Door)」の屋号で事業を行う Ng Say Keong 氏であり、自身が保有するシンガポール特許(スライド&スイングドアシステム)に基づき、被告2社が販売する「SD Door」が特許を侵害すると主張しました。併せて、被告が自社製品を原告の「SK Door」であるかのように表示・説明したとして、passing offも請求していました。
被告は、特許の有効性について、日本の先行特許を根拠に新規性・進歩性欠如を主張しましたが、裁判所は、クレームに含まれる特定構成要件が先行技術に開示されていないとして、特許が有効であると認めつつも、侵害判断に関しては、独立クレームに含まれる必須構成の充足性が争点となり、クレーム解釈の結果、被告製品は当該構成を欠くとして非侵害と判断されました。
一方、passing offについては、原告が「SK Door」として築いてきた営業上の信用(goodwill)を前提に、被告のショールームにおいて真正のSK Doorをサンプルとして提示しながら、実際には別製品を「SK Door」と称して受注・納品していた事実が重く評価されました。裁判所は、私立調査員による おとり購入(trap purchase)の証拠等を踏まえ、被告の行為が出所混同を意図的に惹起するmisrepresentationに当たるとして、損害発生の虞も考慮し、passing offの成立を認めました。
本件は、特許侵害が否定されても、販売現場での表示・説明次第では不正競争類型で責任を問われ得ることを示す事例であると言えます。
なお、passing offとは、英国法系(英国、シンガポール、香港など)で発展した不正競争行為の一類型で、日本の知財実務家の感覚では、「周知表示混同惹起行為」+「信用の冒用」に近い概念となるようです。
参考情報:
判決文
https://www.elitigation.sg/gdviewer/s/2025_SGHC_243
シンガポール法律事務所LEE & LEEによる記事
https://www.leenlee.com.sg/news-publications/singapore-high-court-finds-patent-for-slide-and-swing-doors-valid-but-not-infringed
法務系ニュースサイトSingapore Law Watchによる記事
https://www.singaporelawwatch.sg/Headlines/userid/3/spore-inventor-wins-high-court-suit-against-rivals-who-passed-off-similar-doors-as-his-design
______________
寺岡裕芳 (てらおか ひろよし)
NGB株式会社 東南アジア駐在員事務所(バンコクオフィス)
オフィスマネージャー



