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2026.02.02

特許部 寺岡 裕芳

【特許・意匠・商標ニュース】タイ、「ファストトラック」プログラムについて、特許と意匠で対象範囲が拡大され、商標についても限定的に導入

タイ知的財産局(DIP)は、2016年1月1日付の通知書により、知的財産登録の迅速化サービスである「ファストトラックプラス(Fast Track Plus+)」プログラムを拡充し、以下の3つの新分野を追加すると発表しました。
・発明特許分野:デジタル・イノベーション
・意匠特許分野:自動車部品
・商標分野:電子商取引(Eコマース)

いずれも出願人の国籍に制限はありませんが、タイ第一国出願であることが要件とされているため、日本企業にとっては、利用の可能性が一部限定的となります。しかし、こうした「ファストトラック」プログラムの拡充は、タイ知的財産局(DIP)が、タイのプロ・パテント政策を象徴する重要な施策として位置づけており、タイ国内からの特許・意匠・商標出願を促し、知財活動の活性化を狙っていることが窺えます。

特許出願について、特許審査の迅速化を目的とする「対象特許ファストトラック(Target Patent Fast-Track)」プログラムは、2023年12月8日に開始され、当初は対象技術分野が医療・公衆衛生分野やFuture Food関連技術などに限定されていました。一定の社会的・政策的意義を有する技術分野に絞り、特許審査を優先的に進める枠組みとして運用が開始された点が特徴的となります。

その後、2024年12月2日のアップデートにより、対象技術分野がさらに拡大され、環境イノベーション(グリーンイノベーション)分野も新たにプログラムの対象として追加されました。これにより、環境配慮型技術や持続可能性に資する発明についても、迅速な権利化が図られる制度設計となっています。

そして直近では、2025年12月25日にアップデートされ、以下の5つのカテゴリに属するデジタル関連技術についてもプログラムの対象として追加されました。
・Artificial Intelligence Innovation
・Smart Device Innovation
・Innovation for Communication
・Innovation for Digital Service
・Semiconductor Innovation

対象となる出願は、発明特許(invention patent)及び小特許(petty patent)であるとされ、クレーム数が10項以内であることといったいくつかの要件が必要となります。特に、「タイへの第一国出願」または「タイ特許庁を受理官庁(RO)とするPCT出願」であることが要件に含まれるため、日本企業にとっては利用可能な案件が限定される点には留意が必要となります。

しかしながら、発明特許については出願日から12か月、小特許についてはプログラム参加日から6か月以内に審査結果が出るとされており、タイ国内に研究開発拠点や事業基盤を有する日本企業にとっては、タイ国内での先行出願やPCT(RO/TH)を活用することで、権利化まで長期間を要しがちなタイ特許出願についての権利化期間を大幅に短縮できるという実務上のメリットが期待できます。

なお、タイ知的財産局(DIP)は、意匠出願に関しても、2024年11月29日に「対象意匠ファストトラック(Target Design Patent Fast-Track)」プログラムを設けており、当初は環境イノベーション(グリーンイノベーション)分野に限定された対象物品を、2025年12月24日のアップデートにて、自動車部品分野に拡大しました。

対象となる出願は、やはり、タイへの第一国出願であることとされていますが、意匠出願については、優先権を主張せずに複数国に同時出願するという戦略もあり得ますので、特許よりも利用可能性があるかもしれません。

さらに、タイ知的財産局(DIP)は、商標出願に関しても、2025年12月24日より、「対象商標ファストトラック」プログラムを開始しました。対象範囲は、現段階では、電子商取引分野の商標に限定されており、マドプロ経由を除くタイへの直接出願に限定されています。

タイへの商標出願時に、プログラムへの参加を申請する必要があり、オンラインプラットフォームの販売計画などの商標使用の必要性を示す書類(たとえば、オンラインプラットフォームを通じた商品販売計画等)のほか、指定されたデータベースで出願人自身が先行商標を検索した結果を添付することが求められ、1件の出願につき商品区分は1区分以内、商品項目は10項目以内とすることが要件となります。

本記事は、タイにおける知財法律事務所であるLEXEL IPからのニュースレターによるお知らせをきっかけとして、タイ知的財産局(DIP)の発表内容を弊社独自で解析し、さらにLEXEL IPに内容確認の協力を受けて作成しました。

制度の概要や対象範囲などについては、JETROバンコクからのニュースレターによるお知らせも参考とさせていただきました。

参考情報:
タイ知的財産局(DIP)による「ファストトラックプラス」に関する最新発表(タイ語)
https://www.ipthailand.go.th/images/26647/_____Fast_Track_2569.pdf
タイ知的財産局(DIP)による「特許ファストトラック制度(Digital Innovation)」(タイ語)
https://www.ipthailand.go.th/images/26881/patent/3.Target%20Patent%20Fast-Track%20%20Digital%20Innovation251268.pdf
タイ知的財産局(DIP)による「意匠ファストトラック制度(Automotive Part)」(タイ語)
https://www.ipthailand.go.th/images/2025-12/design-02.pdf
LEXEL IP
https://lexel.co.th/


寺岡裕芳 (てらおか ひろよし)
NGB株式会社 東南アジア駐在員事務所(バンコクオフィス)
オフィスマネージャー

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