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2021.05.24

顧問:張 華威

中国知財局が2020年度年次報告書を発表 ~コロナ禍においても専利・商標出願件数は共に大幅増~

中国国家知的財産権局(以下、「CNIPA」という)は「2020年国家知識産権局年次報告書」を公表し、2020年度(1月~12月)における専利、商標、地理的表示、集積回路配置設計に関する出願統計データが明らかとなった。統計データの内容及び筆者の見解を以下に示す。
1.
特許出願受理件数は149.7万件であり、対前年比6.9%増となった。特許登録件数は53万件であり、対前年比17.1%増となった。2019年に非正常出願の取締強化により出願件数が初めて減少したが、2020年はコロナ禍にも関わらず出願件数が反発した格好だ。全体のうち、中国出願人による特許出願は134.5万件(全体の89.9%)であり、対前年比8.1%増であった。一方、外国出願人による特許出願は15.2万件(全体の10.2%)であり、対前年比3%減となった。2020年はコロナ禍の影響が最も大きかった一年であったため、特に外国出願人の知的財産活動に大きな影響があったことが主な原因であると考えられる。なお、日本からの特許出願件数は53,368件であり、対前年比3.5%減であった。

2.
実用新案権の登録件数は292.7万件であり、対前年比29%増という顕著な増加を見せた。実用新案権の出願はほぼ補助金・奨励金を受けることができない上、非正常出願の取締が強化されているにもかかわらず、出願件数は依然として増えて続けている。全体のうち、外国出願人による実用新案出願はわずか7,759件であり、ほとんどが中国出願人によるものであることがわかる。これは、実用新案制度がない国やあまり活用されていない国がほとんどであり、中国において実用新案権を取得するメリットに対する理解が浅いことが主な原因だと思われる。中国では実用新案出願は、全世界の実用新案出願の95%を占めていると言われており、特許権とほぼ同様の保護を受けられるため訴訟において活用される実績が多く(実用新案権侵害訴訟の件数は特許侵害訴訟の約2倍)、権利化の確実性(2020年の特許出願の登録率はわずか47.3%なのに対し、実用新案の登録率は90.4%)や迅速性(特許が約3年であるのに対し、実用新案は約8カ月)、出願コストや維持コストなどの面で大きなメリットがある。当社の公式YouTubeチャンネルには、中国での実用新案権の活用について詳しく解説する解説動画もあるので、参照されたい。
(URL: https://www.youtube.com/watch?v=KFH_x5hZSUM)

3.
意匠権の出願件数は77万件であり、対前年比8.3%増となった。中国の意匠出願件数は2017年まで安定した変化を見せていたが、2018年から増加傾向が目立つようになり、2020年に改めて史上最多記録を更新した。中国における意匠出願件数は全世界の50%以上を占めると言われており、侵害訴訟に活用する場面も多い。2021年6月1日より施行される専利法第4次改正では部分意匠制度が創設され、意匠の国内優先権が認められ(特許・実用新案を基礎とすることも可能である見込み)、存続期間も出願日から15年まで延長されるため、今後意匠出願の件数がさらに大きく増加することが予想される。

4.
PCT出願受理件数は7.2万件であり、対前年比18.6%増となった。そのうち、国内出願人に出願件数は6.7万件であり、対前年比17.9%増となった。PCT国際出願が多い都市のトップ3は広東省(2.81万件)、江蘇省(0.96万件)、北京市(0.83万件)であり、広東省にかなり集中していることがわかるが、特にHUAWEI社の貢献は大きいと思われる。

5.
専利の復審(拒絶査定不服審判)の請求件数は5.5万件であり(対前年比1.2%減)、既済件数は4.8万件であった(対前年比28.9%増)。復審の審決のうち、48.3%が拒絶査定を取り消し、51.7%が拒絶査定を維持又はその他の終結方式となった。

6.
専利無効審判の請求件数は6,178件であり(対前年比2.7%増)、既済件数は7,144件であった(対前年比34.1%増)。無効審判の平均審理期間は5.9カ月であった。特許無効審判の審決のうち、全部無効が25.3%、一部無効が14.9%、全部有効は約59.8%であった。実用新案無効審判の審決のうち、全部無効が39.2%、一部無効が18.2%、全部有効が42.6%であった。意匠無効審判の審決のうち、全部無効が46%、一部無効が1.1%、全部有効が52.9%であった。日本での特許無効率(一部無効を含む)が約23%(2019年統計)であるのに対し、中国では40.2%と比較的高い水準となっており、権利行使前を行う前は有効性の確認が重要となる。

7.
商標出願受理件数は934.8万件であり、対前年比19.3%増であり、コロナ禍の影響も大きかったにもかかわらず、史上最多記録をさらに更新した。出願件数トップ5の区分は上位から第35類(121.5万件)、第30類(59.7万件)、第9類(52万件)、第25類(50.6万件)、第29類(44.7万件)であった。2019年11月1日に施行された商標法改正で使用を目的としない悪意の出願を拒絶理由、絶対的異議理由、絶対的無効理由として明文化したところ、2020年において上記理由により拒絶された出願は1.6万件に達した。全体のうち、オンライン出願の割合は98.05%であり、2016年の時点に比べて17%の増加となった。国内出願人による出願は916.5万件であり、全体の97.5%を占め、対前年比20.2%増であった。一方で、外国出願人による出願は23.1万件であり、全体の2.5%を占め、対前年比9.4%減となった。特許出願と同様、外国出願人による出願件数は減少がみられており、コロナ禍による知的財産活動の停滞が主な原因だと考えられる。

8.
商標登録件数は576.1万件で、対前年比10.1%減となった。悪意による出願の取締りが厳しくなったことが原因だと考えられる。中国は権利付与前の異議申立制度を採用しており、商標局による審査段階での認可判断を示す予備認可査定率は74.1%であった。商標出願の平均審査期間は4か月であり、前年の4.5か月間より著しく短縮された。また、更新の審査期間は0.5か月、変更登録の審査期間は1か月、譲渡の審査期間は2か月まで短縮された。

9.
商標異議申立の請求件数は13.4万件(対前年比6.5%減)であり、既済件数は14.9万件(対前年比64.7%増)であった。異議申立の審決のうち、全部認容審決が38%、一部認容審決が9.2%、全部棄却審決が52.8%となっており、悪意出願に対して異議申立制度が重要な役割を果たしていることがうかがえる結果となった。

10.
商標拒絶復審(拒絶査定不服審判)の請求件数は29.8万件(対前年比1.3%減)であり、既済件数は30万件(対前年比3%増)であった。拒絶復審の審決のうち、全部拒絶が66.3%、一部拒絶が33.9%、予備認可査定が23.9%となった。

11.
商標無効審判の請求件数は5.3万件(対前年比22.8%増)であり、既済件数は4.3万件(対前年比21.9%増)であった。商標無効審判の審決のうち、全部無効が58.6%、一部無効が12.5%、全部有効が28.9%であった。日本での商標無効率(一部無効を含む)が約50%(2019年統計)であるのに対し、中国では71%とかなり高い水準となっており、権利行使前を行う前は有効性の確認が重要となる。

12.
マドリッドプロトコルに基づく国際商標出願の出願件数は7,553件であり、中国を指定する国際商標出願は5.8万件であった。

13.
地理的表示については、715件の地理的表示商標が登録され、地理的表示商標の累積件数は6,085件であり、昨年より14.3%増加となった。

14.
集積回路配置設計の出願件数は1.4万件であり、対前年比72.8%増であった。登録件数は1.2万件、対前年比77.3%増であった。前年も80%以上の増加率を記録しており、近年における半導体分野の迅速な成長を反映する結果となった。

以上

(参考:専利・商標出願件数の統計データ)

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