IP NEWS知財ニュース

  • 欧州
  • 知財情報

2022.02.24

特許部 高橋卓也

【特許・意匠ニュース】欧州特許庁、単一効特許取得のための事前手続きを可能とする経過措置を発表

2022年1月19日、欧州特許庁(EPO)は、単一効特許(Unitary Patent: UP)取得のための事前手続きを可能とする以下の2つの経過措置を発表しました。

図1:UP取得のための事前手続きを可能とする2つの経過措置

これら経過措置は、ドイツが統一特許裁判所協定(Agreement on a Unified Patent Court : UPCA)の批准書をEU理事会事務局に寄託した日から、その4か月後の月の初日となるUPCA発効日までの期間において有効で、実体審査が完了して特許付与予定のテキストが通知されるEPC規則71(3)に基づく通知(規則71(3)通知)が発行されている欧州特許出願が適用対象となります。

単一効保護に関するEU規則1257/2012第18条および単一効特許保護に関する規則6(1)によれば、UP取得のための単一効申請(Request for Unitary Effect)は、特許付与の公告日がUPCA発効日以降の欧州特許を対象として、特許付与の公告後1か月以内にEPOに対して提出する必要があります。

1つ目の経過措置である「事前の単一効申請」は、規則71(3)通知が発行され、特許付与の公告日がUPCA発効日以降となる出願について、UPCA発効前であっても単一効申請を可能とするものです。UPCA発効前の単一効申請が所定要件を満たしている場合、特許付与の公告後、早ければ特許付与の公告の数日後に、UP登録通知が発行されます。単一効申請が所定要件を満たしていない場合には、不備の修正を求める通知または申請却下の通知が発行されます。この所定要件には、例えば、出願言語が英語の場合、英語以外のEU言語への全文翻訳の提出が含まれます。なお、事前の単一効申請を行ったとしても特許付与の公告日がUPCA発効日以降に延期されることにはなりませんので注意が必要です。

特許付与の公告日をUPCA発効日以降に延期させるには、2つ目の経過措置である「特許付与決定の発行延期申請」が必要となります。「特許付与決定の発行延期申請」は、規則71(3)通知が発行されていて、特許付与予定のテキストにまだ同意していない出願、すなわち規則71(3)通知で求められる登録料の納付およびクレーム翻訳の提出が完了していない出願について、特許付与の公告がUPCA発効日以降となるように、特許付与の公告予定日を示す特許付与決定(Decision to Grant)の発行を遅らせることを可能とする措置です。この「特許付与決定の発行延期申請」は、登録料の納付およびクレーム翻訳の提出と同時に提出することが可能です。

例えば、2022年6月30日にドイツがUPCAの批准書を寄託してUPCAが10月1日に発効するシナリオを考えた場合、2022年2月21日付で規則71(3)通知が発行されている出願については、特許付与予定テキストへの同意を6月30日まで保留していることを条件として、応答期限である7月4日までの期間において特許付与決定の発行延期申請が可能となり、UP取得のための単一効申請も可能となります。


図2:準備が最も円滑に進んだ場合の予想タイムラインと出願例(2022年2月21日現在)

なお、特許付与公告の媒体となるEPOの官報は毎週水曜日に発行されますので、上記のタイムラインで特許付与決定の発行延期申請を行った場合、UPCA発効後最初の水曜日である2022年10月5日に特許付与決定が発行される見込みとなります。単一効申請については、UPCA発効の前、または、特許付与公告から1か月以内に手続き可能です。

最後に、UPの特徴について簡単にまとめます。

1.権利の地理的範囲
UPは、特許付与の公告の時点でUPCAに批准しているUPCA締約国に対して単一の効力を有します。すなわち、特許付与の公告のタイミングによって、権利が及ぶ地理的範囲が変わる可能性があります。2022年2月21日時点におけるUPCA締約国は16か国であり、ドイツがUPCAに批准することで17か国となります。UPCAの批准状況とPPAにつきましては、2022年1月の弊社記事も合わせてご参照ください。


図3:EPC加盟国、EU加盟国、およびUPCA批准状況(2022年2月21日現在)

2.単一効申請時の費用
上述のとおり、出願言語が英語の場合、英語以外のEU言語への全文翻訳が必要となります。例えば、UPCA非締約国であるスペインでの権利登録のためにスペイン語翻訳を作成する場合、そのスペイン語翻訳を用いることができます。

3.権利維持費用
2015年時点における欧州特許の権利有効化数が最も多い4か国分に相当する年金をEPOに納付します。詳細はEPOのUP料金サイトをご参照ください。なお、実施許諾の宣言を提出することで年金が減額される所謂ライセンス・オブ・ライトの制度が用意されていて、減額率は15%と規定されています(Unitary Patent Guide F-III)。

4.裁判管轄
UPに関する侵害訴訟や無効訴訟等の訴訟は、UPCの専属管轄となります。従来の欧州特許に対して適用される例外規定であるオプトアウト(UPCの専属管轄からの除外)はUPには適用されません。

弊社では欧州統一特許制度の動向について引き続き情報収集を行うとともに、サンライズ期間におけるオプトアウト及び単一効特許の取得のオプションについて適切なタイミングでお客様にご案内できるよう準備を進めて参ります。

欧州統一特許制度に関するお問合せはNGB欧州統一特許チーム(upc@ngb.co.jp)宛にご連絡ください。

関連記事

お役立ち資料
メールマガジン