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2006.02.15

特許/均等論/開示-提供ルール

放棄した主題を均等論に基づき再びクレームの対象とすることに関する「開示-提供ルール」は、明細書において一般的な記載があれば、公共に対し、ある特定問題の全ての事項を開示したことになるという意味ではない。クレームされていない主題が公共へ開示されていると認められるためには、クレームされていない主題が特許権者によりクレーム限定事項の代替物として明示されていなくてはならないということを意味する。

ある特許クレームの限定事項であるサッカライドが砂糖という意味であるとしても、当該特許の被疑侵害者が、微晶質セルロースについて、加水分解を防止するサッカライドとして機能するクレームされていない代替物であるということを発明者が明示している当該特許の部分を指摘していない場合、「開示-提供ルール」は適用されず、均等侵害は否定されない。

仮差止命令の段階では、被疑侵害製品に関する多くのテストがなければ侵害があったとは認められないという厳格なルールを設定するのは適切ではない。

仮差止命令の要件である回復し難い損害の可能性は、市場におけるその他の侵害者の存在によっては否定されない。特許権者は一度にあらゆる侵害者を訴える必要はなく、一度に訴える侵害者を1名のみ選んでも、回復し難い損害であることと矛盾しない。
(Pfizer Inc., et al. v. Teva Pharmaceuticals USA, Inc., et al. CAFC, 11/22/05)

事実概要
Warner-Lambert Company, LLC(以下、「Warner-Lambert」)は、高血圧治療薬として使用されるアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)を含む化合物に関する米国特許第4,743,450号(以下、「’450特許」)を所有している。’450特許は、還化、加水分解、酸化によるキナプリルの変質を最小限にするための金属を含む安定剤と糖を含む処方を開示している。Warner-Lambertは、Accupril?という名称の処方薬の販売に関してFDAから許可を得た。さらに、FDA承認薬のオレンジブックに’450特許が記載された。

1999年1月15日、Teva Pharmaceuticals USA, Inc.(以下、「Teva」)は、ハッチワックスマン法にしたがって、Accupril?のジェネリック医薬品販売の許可を求め、FDAに対し、簡約新薬申請(以下、「ANDA申請」)を提出した。最初のANDA申請において、Tevaは、食品医薬品化粧品法第355条(j)(5)(B)(iv)に基づき、180日間の排他的販売期間に関する権利を得た。2004年12月15日、Tevaは、Ranbaxy Pharmaceuticals, Inc. およびRanbaxy Laboratories Limited(以下、総称して「Ranbaxy」)が類似の薬品を販売できるようにするため、排他的販売期間の権利を放棄し、RanbaxyはANDA申請を提出し、FDA の承認を得た。

2005年1月28日、Warner-Lambertおよびその親会社であるPfizer Inc.(以下「Pfizer」)は、特許法第271条(e)(2)(A)に基づき、TevaとRanbaxyが’450特許を侵害していると主張し、ニュージャージー州連邦地方裁判所に訴訟を提起した。2005年3月29日、地裁は、Warner-Lambertが自己の主張が認められる可能性を証明できたとして、Ranbaxyのキナプリルを含むジェネリック医薬品の販売に関する仮差止命令を下した。2005年3月31日、Warner-Lambertが200,000,000ドルの担保を提供したため、仮差止命令は発効した。

仮差止命令に対し、Ranbaxy は控訴した。

確認
判旨
(1)クレーム解釈
 ’450特許のクレーム1は、「加水分解を抑止するための適量のサッカライド」を要求している。
(…… 以下略)

*判決内容詳細については “I.P.R.”誌でご確認ください。 

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