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2006.11.13

柏原雄人

【最近よくあるご質問】 アメリカ特許庁ルール改正案について (4) 特許庁「提訴されることは覚悟している」

お客様から頂いた各種お問合せに対し、渉外部員が担当部門の協力を得て、お答えします。
今回のご質問は:
アメリカ特許庁が、特許出願のクレーム数を制限する等のルール改正を予定しているらしいと噂に聞きました。詳細を教えて下さい。(その4)
先日、継続出願件数に制限を加えるルール改正案(Continuation Practice)をテーマとした公開討論の場で、特許庁の責任者が「特許庁が提訴されるであろうことは認識している」と発言する一幕がありました。

場面は、10月19日にワシントンで開催された the American Intellectual Property Law Association(AIPLA)の年次集会。まず特許庁(特許部門責任者)の John J. Doll 氏が、特許の質改善及び審査滞貨の解消のためにContinuation Practice導入が必要であることを訴え、続いて弁護士代表としてFinnegan事務所のVan Horn弁護士が、同ルール導入によって生じるデメリットを述べます。双方が各々の主張するところを述べ終えた頃を見計らって、討論会の司会者から、AIPLAが既に提起している一つの疑問が投げかけられました。即ち「特許庁はこうしたルール改正を行う法的権限を持っているのでしょうか?」

ここで、AIPLAが4月24日付で特許庁宛てに送っている書簡を見てみましょう。これは特許庁のパブコメ募集に応じて提出されたもので、AIPLAがContinuation Practiceの導入に反対する根拠の一つとして法的権限の欠落を挙げています。
『本件ルール改正案において特許庁は、2回目以降の継続出願で提出される補正・議論・証拠を以前の出願で提出出来なかった理由を出願人が説明しない限り、継続出願の機会を1回のみに制限しようとしている。これらの制限は確実に、特許法120条、121条及び365条(c)項に定められた先出願の利益を主張する権利、及び132条(b)項に定められた継続審査の機会を利用する権利を制限するものである。
 特許法2条(b)項(2)を見ても、特許庁が本件ルール改正案において上記制限を課す法的権限を有することは認められていない。特許法120条、121条及び365条(c)項の文言は明瞭であり、何ら特殊な要件を求めるものではない。即ち、継続出願は親出願の出願日と「同じ効果を持」ち「同じ資格が与えられる」べきである。これらの規定に関し、特許庁の権限において先出願日の利益を得る要件の追加や修正を行うことは許されない。
 特許庁は幾つかの判例を思い出すべきである – それらは、1件の出願から派生する継続出願の件数に制限を設ける権限を、特許庁は有しないことを示唆している(In re Henriksen及び In re Hogan)。特許庁は、継続出願の数に絶対的な制限を設けるものではないため、本件ルール改正は合法であると主張している。その様な主張にも関わらず、特許法及び判例が示していることは、継続出願の数を実質的に制限する効果を持つ条件を課して、法令によって保証されている出願人の権利を否定する権利を、特許庁は有しないということだ。』

つまりAIPLAは、特許法及び過去の判例を根拠として、Continuation Practiceを導入する権限は特許庁に無いと主張しているわけです。

さて、司会者の質問に対し、特許庁のDoll氏は何と答えたでしょうか。
「我々はその問題について、十分な検討を行ってきた。特許庁に法的な権限があるのかどうか、明確な指針はどこにも無い。幾つかの論点があり、特許庁が提訴されるであろうことも認識している。様々な可能性を比較検討した結果、裁判に持ち込まれた場合の我々の勝算は5分5分よりも高いと見込んでいる。」

これを受けたVan Horn弁護士は「5分5分よりもはるかに低い」と切り返したそうですが、実を申しますと私共も、特許庁側が「勝算は5分5分よりも高い」と発言したその真意を計りかねているところです。もし本当に5分5分に近い勝負と考えているとすれば、なにやら「背水の陣」とでも呼べそうな悲壮な覚悟を感じてしまいます。ここは一つ、”Doll quipped, drawing laughter from the crowd.(Dollは皮肉を言って会場の笑いを誘った)”と描写されていることからも「5分5分よりもマシといったところだ」とおどけてみせたものと考えておくべきでしょう。

(渉外部 柏原)

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