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2006.11.18

特許/反トラスト法/植物技術に関するライセンス契約

ライセンス契約が反トラスト法違反であることを主張するには、争点の契約が競争に反する現実的な効果を有することに関して証明しなければならない。

特許権者は、特許された植物技術を他人が製品にし、使用、販売することを排除する権利を有している。移植禁止条項は、バイオテクノロジーがそれ自身の複製を作成する場合に、種子の購入者が当該特許を使用しないようにするものであり、この制限は、特許法の下に認められる有効な権利の行使である。当該技術の研究禁止の方針は、使用制限の領域であり、同様に特許法による保護の範囲内である。栽培業者インセンティブ契約がオプションである場合には、購入の強制は認められない。(Monsanto Company v. Mitchell Scruggs, et al., CAFC, 8/16/06)

事実概要
Monsanto Company(以下、Monsanto)が有する米国特許第5,352,605号(以下、’605特許)は、35S・カリフラワー・モザイク・ウイルス(以下、CaMV)プロモーター(促進剤)、関連タンパク質配列および停止信号を含む合成遺伝子に関して、除草剤抵抗性を設計するための植物DNAの挿入に関する。Monsantoは、さらに米国特許第5,164,316号、同第5,196,525号および同第5,322,938号(以下、McPherson特許と総称)を有し、当該特許は、昆虫の抵抗特性に関する。McPherson特許は、いくつかの点において、’605特許から発展し、機能強化されたCaMVの35Sプロモーターを開示している。

Monsantoは、’605特許の技術を使用して、グリホセート除草剤耐性大豆および綿を開発し、Roundup Ready (R)大豆および綿として販売しており、Roundup Ready (R)植物が耐性を示すグリホセート除草剤の一つがRoundupであり、これもMonsantoによって販売された。Monsantoは、McPherson特許と組み合わせて’605特許を使用し、グリホセート除草剤および特定の昆虫に耐性を示す積層特性綿(以下、Bollgard/Roundup Ready (R) cotton)を開発した。

Monsantoは、そのバイオテクノロジーを種子業者(以下、種子販売者)に実施許諾し始め、Roundup Ready (R)技術のライセンスに関しては、1996年に開始し、Bollgard/Roundup Ready (R) cotton技術に関しては、1998年に開始した。ライセンス契約は、種子栽培業者が、その遺伝資源の中にMonsantoのバイオテクノロジーを導入して、Roundup Ready (R)とBollgard/Roundup Ready (R) cottonの種子を生産することを認めており、また、種子販売業者に特定の制限を課し、Monsantoのライセンス契約に署名しない栽培業者には、種子業者がMonsantoの技術を有する種子を販売しないものとすることが含まれ、しかるべく販売された種子は、単一の商品作物のみを栽培するために栽培業者に使用されうるものとしている。Monsantoによって種子栽培業者に要求される制限は、以下の事項を含む。(1) 栽培業者は、Monsantoのバイオテクノロジーを有する種子を単一作物の栽培にのみ使用すること(「独占条項」)、(2) 当該バイオテクノロジーを有する種子を植え直すために移転または再利用することを禁止すること(「移植禁止規定」)、(3) 研究または実験を禁止すること(「研究禁止規定」)、(4) 「技術費用」の支払を要求すること。

Mitchell Scruggs、Eddie Scruggs、Scruggs Farm & Supplies, LLC、Scruggs Farm Joint Venture、HES Farms, Inc.、MES Farms, Inc.、MHS Farms, Inc.(以下、Scruggsと総称)は、Roundup Ready (R)の大豆種子とBollgard/Roundup Ready (R) cottonの種子を種子業者から購入したが、ライセンス契約は締結しておらず、購入した種子により栽培し、大豆と綿を収穫した後、次世代の種子を保存した。以降の作物は、保存した種子で栽培され、次世代の作物から入手した種子によって同様に引き継がれた。

Monsantoは、Scruggsの活動を調査し、’605特許とMcPherson特許に関する侵害訴訟をミシシッピ北部地区連邦地方裁判所に提起した。事実審は、仮差止めにより、ScruggsがMonsanto特許のバイオテクノロジーを有する種子のさらなる販売と使用を禁止することを命じた。Scruggsは、連邦法および州法の反トラスト法上の請求、特許不正使用による積極的抗弁に基づき応訴した。Scruggsは、特に、Monsantoが、シャーマン法、第1条、第2条に反して、栽培業者ライセンス契約、栽培業者インセンティブ契約、および種子パートナー・ライセンス契約に基づき、種子の購入とRoundupの購入を抱き合わせし、同様に、綿の種子に関してRoundupとBollgard特性を抱き合わせていると主張した。また、Scruggsは、Monsantoがシャーマン法第2条に違反し、関連市場を違法に独占しまたは独占を試みたと主張し、さらに、コモンロー上の反訴請求を主張し、プライバシーの侵害、不法侵入、契約および/または取引関係への不当介入、誣告、改造、迷惑行為、不法行為上の厳格責任、過失責任、および不正競争に関して主張した。

Scruggsは、侵害を否定し、’605特許とMcPherson特許の無効確認を求めた。Monsantoは、侵害、反トラスト法、特許不正使用の抗弁に関する略式判決を求める申立を行い、コモンロー上の反訴請求を主張した。Scruggsは、仮差止め命令を取り消すよう求め、略式判決を求めて反訴請求したが、Monsantoによる略式判決の申立が認められ、Scruggsによる仮差止め命令取消しの申立は斥けられた。また、事実審は、永久差止め命令を認め、終局判決とした。

Scruggsは、控訴した。損害賠償に関する審理は、控訴に持ち込まれた。連邦巡回控訴裁判所は、28 U.S.C. § 1295(a)に基づき、裁判権を有する。

確認、取消、差戻し

判旨
(1) 特許侵害
Monsantoによる侵害の略式判決を求める申し立てを認めるにあたり、事実審は、Scruggsによる自白に依拠している。すなわち、(1) Roundup Ready (R)大豆とBollgard/Roundup Ready (R) cottonの購入、(2) Monsantoライセンスの取得懈怠、(3) 将来の栽培を目的とする大豆と綿の種子の貯蔵。また、裁判所は、Monsantoの科学テストを指摘し、Scruggsの大豆と綿の作物が、Monsantoの特許技術を含むことを証明しているとした。
(…… 以下略)

*判決内容詳細については “I.P.R.”誌でご確認ください。

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