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2007.12.14

【最近よくあるご質問】 EPC2000とロンドン協定について

お客様から頂いた各種お問合せに対し、渉外部員が担当部門の協力を得て、お答えします。
今回のご質問は:
「EPC2000」と「ロンドン協定」について教えて下さい。
EPC2000
EPC2000とは、2000年11月のEPC加盟国外交会議で採択された改正欧州特許条約の通称で、つい先日、2007年12月13日に発効しました。改正条項は広範囲に亘り、数多くの修正が加えられていますが、そもそも改正の趣旨・目的が
 -TRIPS協定条文との整合、特許法条約(PLT)批准の準備
 -判例や経験則等によって運用されている実情の追認
 -詳細な手続き規定の実施細則への移行(柔軟性向上)etc
という“改正のための改正”とも言えるものであるせいか、(1)優先権証明書逐語訳の提出が不要になった(2)日本語明細書で出願日を確保することが可能になった、の2点以外には、実質的に大きなインパクトのある変更は少ないように感じます。

ロンドン協定(London Agreement)
一方、ロンドン協定は、欧州におけるイノベーション向上を目指して特許取得コストを低減することがその趣旨ですから、その与える影響は明確にして大です。紙幅の制限により詳細は号を改めてご紹介致しますが、概略を申せば、ロンドン協定の締結国は特許付与後の明細書について、自国公用語への翻訳を要求出来なくなります。すなわち、EP出願を英語で行った場合、ドイツ語・フランス語をはじめとする各指定国言語への翻訳費用を大幅に削減することが可能になります。ロンドン協定もEPC2000と同じ2000年に採択されて以来、長らく発効が待たれてきましたが、現在、発効まであと僅か一歩のところまで来ています。

条約/協定の採択から発効まで
一般に、国家がある条約/協定を結ぶことに同意したとしても、それだけではなんら法的効力は生じません。代表者がまず条約への合意を示す「署名」を行い、自国へ持ち帰って「議会の承認」を得ます。必要に応じて国内法の改正を行ったあと、批准書を作成して条約に定められた機関に「寄託」を行います。この「署名」~「議会の承認」~「寄託」という3ステップを完了することにより、はじめて、その国は条約を「批准」したことになります。一方、条約/協定それ自体がいつ効力を生じるかは、条約の中に発効条件として独自に定められています。

EPC2000の場合は、
 (1)15ヶ国目の国が批准した日から2年後に発効する
 (2)全てのEPC加盟国は、発効の時までに批准しなければならない
旨が定められていました。2002年にスロバキアが最初に行って以降、各EPC加盟国は順次批准手続きを行っていきましたが、2005年12月13日、ギリシャが15ヶ国目の批准国として批准書を寄託しました。この時点で、2年後の2007年12月13日に発効することが決定していたわけです。

ロンドン協定の発効条件は、
 (1)8ヶ国以上の国が批准し、かつ
 (2)イギリス・ドイツ・フランスが批准する
というものです。現在、イギリス・ドイツを含む11ヶ国が批准手続きを完了していますので、残るはフランスのみ。自国の文化・言語を尊重するお国柄ですから、フランスの批准を危ぶむ声も多く聞かれていましたが、今年の10月に無事「議会の承認」をとおり、あとは批准書の「寄託」を待つばかりとなりました。EPC2000もロンドン協定も、批准書の寄託先は同じくドイツ政府と定められているため、EPC2000の最終寄託期限である12月12日までに、二通の批准書が併せて寄託されることが期待されていました。しかしながら蓋を開けてみれば、ドイツ政府に届けられたのはEPC2000の批准書一通のみ。フランスよ、どこまで引っ張るのか?何を目論んでいるのか?・・・上に述べた「僅か一歩」は、思いのほか長い歩幅なのかもしれません。

以上

特別付録 [EPC2000発効前夜サイドストーリー・特許部の(少しだけ)長い一日]
12月13日、NGB特許部は、朝から緊迫した空気に覆われていた。EPC2000が発効するその当日になっても、ポルトガル(以下、葡国)だけ同条約の批准が確認出来ていないのだ。EPC2000を批准しないということは、同時にEPCからの脱退を意味する。葡国での権利化を実際に希望するクライアントは少ないとはいえ、いまや多くのEP出願が「全指定」を選択している。今日出願予定のEP出願について、将来的に葡国での権利化を保証出来ないかもしれない – クライアントから「葡国での権利化は不要」との書面を頂くか、あるいは全件PCT出願へ切替えるか – 苦悩するマネージャー達。
夕刻。出所して来たばかりの欧州代理人に早速電話で確認を行う。ドイツ訛りの英語に耳をかたむけるマネージャー。夕陽に染まるその顔に、ようやく、今日初めての笑みが浮かんだ・・・。
葡国は期限最終日の12月12日に批准書を寄託。翌13日、EPC2000は予定どおり全加盟国34ヶ国(2008年加盟予定の2ヶ国を含む)の参加を得て、正式に発効した。 [完]

(渉外部 柏原)

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