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2008.08.04

【世界の知財プロに聞く】第3回 Max Ng氏(シンガポール弁護士)

第3回 Max Ng氏(シンガポール弁護士)
世界各国から毎日のようにNGBを訪れる知財プロフェッショナルたちの素顔に迫るコーナー。
第3回ゲストはシンガポール弁護士Max Ng氏。

Max Ng氏はマレーシアのクアラルンプール出身、シンガポール国立大学で法律を学び、現在シンガポールにおいて活躍される才気溢れるシンガポール・バリスター。Max Ng氏のNGB訪問時シンガポールの知財事情に関するお話を伺いました。
※Max Ng氏は、ELLA CHEONG SPRUSON & FERGUSON 所属

Q1. ご訪問ありがとうございます。日本ではどのように過ごされる予定ですか?
今まで日本を訪れる機会に恵まれませんでしたので、今回はこの国の景色そして美しく印象的な東京という街を満喫するため数日休暇をとる予定です。

Q2. 出身地クアラルンプールとシンガポールについて簡単に教えて下さい。
マレーシアの首都クアラルンプールは『ペトロナスツインタワー』が有名で、このツインタワーはかつて世界で最も高い高層建築でした。またシンガポールは最近完成した世界最大の観覧車『シンガポール・フライヤー』が有名です。また初の夜間開催となるF1レースも今年9月にシンガポールで開催予定です。

Q3. なぜ弁護士になろうと思われたのですか?
若い頃は英語が得意な科目のひとつで、さらに議論好きで負けん気が強かったため弁護士になるのが最適であると感じていました。

Q4. 弁護士になるには、どのような試験を突破しなければなりませんでしたか?
まず公認された大学で法学の学位を取り、司法試験に合格し、さらに実務における法的事項の取り扱い方法を教えるピュピル・マスター(PUPIL MASTER)の監督の下、PULILAGEと呼ばれるインターンシップのようなプロセスを踏まなければなりません。PULILAGEは実務経験を得るために実際に顧客の案件を取扱う機会を得る時期です。

Q5. なぜ知財ビジネスに興味を持たれましたか?また何にやりがいを持っていますか?
私はこの業界に入った時、偶然知財部門に配属され知財の世界に足を踏み入れました。その時知財はまだ新興の実務分野でしたが、それ以来この分野で継続的に実務経験を積み、知財保護の分野において、クライアントの目標達成を導くことができた時いつも満足を感じています。現在は高裁での特許訴訟トライアル、商標の係争事件・犯罪訴追手続きなど数多くの知財訴訟を取扱っています。

Q6. シンガポールではどのような産業が盛んですか?
IT、エレクトロニクス、製薬そして石油化学製品がシンガポールで発達した産業です。加えて世界で最も忙しい港の一つとして知られているように海運業も大変発達した産業です。最近急速に発達している産業としては、石油採掘機械そしてバイオ技術、メディア、インタラクティブ・デジタルメディア、オンラインゲームのような新産業があります。またシンガポールはその内外で営業活動を行なう100以上の銀行・金融機関を有する安定した金融センターでもあります。

Q7. 出身国マレーシアの産業についても教えて頂けませんか?
マレーシアには第一次産品を中心とする多くの産業があります。歴史的にはマレーシアは錫、ゴムを生産することでよく知られており、現在はヤシ油(世界一の産出国)また石油および石油関連産業、木材、電子機器、織物に重点を置いています。多くの製造工場がマレーシア各地で操業しており、世界のDVDプレーヤーの15%はマレーシアで生産されています。

Q8. シンガポールで最も権利取得に意欲的な産業は何ですか?
シンガポールに本社を置く多国籍企業がたくさんあり、それらの多くは自身の権利に対して強い意識を持ち権利取得に大変積極的です。どの産業が最も権利取得に意欲的であるか言及することは難しいですが、LVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトングループ)のようなファッションハウスの多くが自社の権利を守るため積極的に取り締りを行なっています。またマイクロソフトのようなIT企業も権利取得に意欲的です。

Q9.シンガポールではごみのポイ捨てはとても厳しい罰を受けると聞いていますが、知財の不正使用も同じように厳しく罰せらるのでしょうか?
ポイ捨てに対する罰則は常習犯のためにある程度の罰金と矯正作業が科されます。しかしながら、知財侵害に対する罰則はある一面においてより厳しいと思います。具体的には、商標模倣者に対して10万シンガポールドル(約800万円)以下の罰金若しくは5年以下の懲役、またはその両方を科すことが可能となっています。

Q10.シンガポール国内の中小企業は権利取得に対する姿勢はどのようなものですか?
知財保護に対する意識は高まってきています。多くの企業はこの知財分野を調査・検討していますが、中小企業に知財に対する意識・考え方を根付かせるには時間がかかると思います。
このためシンガポールの知財保護における知識及び能力を浸透させるため、2003年シンガポールIPアカデミーが設立されました。

Q11. シンガポールの企業は一般的にどのように知財を取扱っていますか?
大企業は一般的に規模の差はありますが、企業の知財案件のすべてを取扱う専門の知財部門を有しています。しかしながらシンガポールの大企業の多くが外国の多国籍企業であるため、それら企業の知財部門のいくつかは彼らの本国を本拠としております。
一方、中小企業は通常自身の知財部門を有しておらず、特許事務所もしくは法律事務所に業務をアウトソーシングしています。

Q12. シンガポールにおける知財教育の現状について教えて頂けませんか?
先ほど述べたように2003年にシンガポールIPアカデミーが設立されました。このIPアカデミーは、知財の重要性をシンガポールの企業に教育・普及させる役割を持っています。このIPアカデミーは知財法における卒業認定コースのほか知財専門家向けのエクゼクティブコースを運営しています。

Q13. シンガポールにおける最近の知財ニュースを一つ教えて下さい。
最近シンガポールの裁判所は、アニメソフトの不法ダウンロードに関する情報開示をインターネットサービスプロバイダー(ISP)に強いる命令を出しました。このような命令は従来許されていませんでした。しかしこのケースでは、日本の人気アニメーションをシンガポールに輸入していたODEX社が、過去10ヶ月において相当な数の不法ダウンロードがシンガポールにおいて行なわれた結果過去2年間の売り上げが著しく落ち込んだと主張し、この人気アニメを不法にダウンロードした容疑がかけられていたISPユーザーの身元情報を公開を求め、ISP3社に対し個別に訴訟を提起しました。この裁判は、実際の著作権所有者ではないただの配給業者もしくはライセンシーであったODEX社がこのような法的処置を求めるにふさわしい団体であるかが争点でした。

Q14. 関心がある日本の知財トピックを教えてください。
インターネットなどの新技術およびより一層のデジタル化に対し、日本の著作権法がどのように発展し新しい環境に対応するためにどのように変化するか興味があります。

Q15. この機会を利用して読者にメッセージをお願い致します。
読者の皆様がこの記事に興味を持って頂けると幸いです。またIPコミュニティのより多くのメンバーがこの分野での経験を共有していくことを望みます。

(記事担当:特許部 渡邊)

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