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2009.11.25

【巷で話題の新製品:特許Watch!】『羽が無いのに扇風機!?新たな旋風を巻き起こせるか?』の巻

【巷で話題の新製品:特許Watch!】では、新製品の発表もしくは発売の情報に関連した特許やその関連特許の動向を特集していきます。
まずは、右の図1をご覧頂きたい。これは何に見えるだろうか?

虫眼鏡? 金属探知機? いやひょっとすると近未来のひみつ道具か・・・

実はこれ扇風機なのだそうだ。正確には扇状の羽が無い為、送風機と言うべきだろうか。そしてこれは、イギリスのdyson社の新製品である。

dyson社は掃除機の会社というイメージがあるが、実は掃除機以外にドラム式洗濯機やハンドドライヤーなどの製品も過去に手掛けていた様である。

dyson社は、サイクロン式掃除機を初めて開発した会社であり、風を操るスペシャリスト集団とも言え、今回の様な扇風機の開発に至ったと推測される。

扇風機というと扇状の羽が回転して風を起こすというものだが、その歴史は古く、はじめての扇風機発売は1893年とのこと。(アメリカのウェスティングハウス社製 参照:社団法人 日本電器工業会『扇風機の歴史』 )
約115年の歴史を持つ扇風機だが、その形状は現在でもほとんど変わっていないと言える。今回、dyson社がこの様な新しい形状のものを製品化したのは、大革命と言えるのではないかと考える。

今回、この製品に関する特許を紹介すると共にdyson社の外国特許出願状況の分析を実施することにする。

まず始めに今回の製品の対象特許をesp@cenetで調べ、以下の特許ファミリーを見つけた。
GB2452593 (A) — 2009-03-11
GB2452490 (A) — 2009-03-11
WO2009030881 (A1) — 2009-03-12
WO2009030879 (A1) — 2009-03-12
US2009060711 (A1) — 2009-03-05
US2009060710 (A1) — 2009-03-05
JP2009062987 (A) — 2009-03-26
JP2009062986 (A) — 2009-03-26
CN101424279 (A) — 2009-05-06
CN101424278 (A) — 2009-05-06

技術的な特徴については、対象の特許及びdyson社のホームページを参照して頂きたいが、簡単な原理としては、土台となっている部分から空気を吸い込み、上側の輪になっている部分に空気を送り込むわけだが、この空気の出口に特徴がある。空気が出口に出るの間、内部で絞りがあり、これにより空気に圧力が生じ、空気流が生じる。さらに、開口部はコアンダ面を有しており、コアンダ効果(wikipedia)によって空気が増量され、強い風となって吐き出されるという原理である。

それほど難しい技術を使用しているわけではなく、構造としてはシンプルな気がする。既にいくつかのサイトで紹介されていたが、実はこの原理、何と既に東芝が1980年(昭和50年)に出願済みであった(図3.特開昭56-167897)。残念ながら当該出願は審査請求がされないまま権利化には至らず、また製品化されることもなかった様である。dyson社に無い構造として、dyson社の製品は円形だが、東芝の公開公報には四角でも可能ということで四角のタイプの図面が記されていた(下図参照)。

形状が新しい為、かなり人目を引くことは間違いないが、市場想定価格は、直径30cmモデルが39,000円前後、直径25cmモデルが37,000円前後と、従来のものと比較すると高額な印象がある。
新しいもの好きの私としては購入も検討したいところだが、唯一つ気になる点は、従来の扇風機と同様に、子供の頃にやっていた扇風機の前で叫び、”宇宙人の声マネ”というのができるかどうかということだ。

最後に今回の扇風機の分析ではないが、dyson社の各国の出願の状況を調べた。調査は、今回の扇風機の分野に限らずdyson社の出願全部をファミリー単位の件数で分析した。下記の図4に特に出願の多い国の分布を記載したので参照頂きたい。主力製品である掃除機などの製品は、多くの国に出荷される為か、主要な国には出願がされていることが分かる。また、PCTでの出願がかなり多いことも分かる。

(IP総研 技術グループ 研究員 本田竜一)

図1.dyson社の新製品
図2.製品の原理
図3.東芝の出願:特開昭56-167897

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図4.dyson社の国別出願状況(ファミリー単位) 
※dyson社のすべての出願であり、分野は限定していない。

※本ページの製品画像は、dyson社に著作権が帰属します。

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