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2010.01.07

【世界の知財プロに聞く】第11回 Miguel Rigueiro氏(スペイン知財サービス会社 外国特許部長)

スペイン知財サービス会社の外国特許部長を務めるMMiguel Rigueiro氏にお話を伺いました。スペイン、ポルトガルにとどまらず、南米7カ国にもオフィスを構え、南米にも強いネットワークを持つ知財サービス会社。その外国特許部長であるRiqueiro氏は南米の各オフィスへ定期的に出張していますが、日本訪問は初めてとのこと。帯同されたブラジルの弁理士Rafael Freire氏からも、南米の事情などを伺うことができました。

※Rigueiro氏はClarke & Modet Co.所属

(Riguiero氏ご自身について)
Q1.ご出身地についてお聞かせ頂けますか?
- 私はマドリード出身です。マドリードはスペインの首都であり、市内に住む人の数は約500万人、プラド美術館、テュッセン美術館、レイナ・ソフィア美術館など、世界に名だたる博物館や美術館が数々ある国際都市です。もちろん、それ以外にも、マドリードは観光やビジネスで訪れる人にとって様々な魅力がある場所です。

Q2.大学時代には何を専攻されていたのですか?
私は政治学、国際関係論を専攻していました。経営学で修士をとり、国際貿易の専門家となりました。そして11年前に、縁あって知財ビジネスの分野で修士課程を修了し、それ以降知財ビジネスに関連する様々なコースでの勉強をしています。

Q3.縁あってとのことですが、知財ビジネスに入った具体的なきっかけは?
– 大学時代の友人が声をかけてくれたことです。スペインでは転職はそれほど珍しいことではないですが、やはり難しい決断でした。今はこの仕事に非常に満足しているので、良い決断をしたと思っています。

Q4.知財ビジネスの魅力とは、また現在の仕事に満足している点というのは特にどんなところですか?
– まず技術発展の最先端にいられるということですね。また外国特許部の部長としての仕事は、クライアントや世界中の特許事務所等との絶え間ないやり取りを通し、日々学びの連続です。学びには終わりがなく、とてもやりがいがあります。私は国際貿易の世界から知的財産の世界に来たわけですが、Clarke Modetのメンバーとしてスペイン知財ビジネスの中心的立場にいられることに大変満足しています。

(スペインの産業、知財事情について)
Q5.スペインの産業について教えてください。どのような産業が最も発達していますか? また、急成長をしている産業は何でしょうか?
– やはり、サービス産業、特に観光に強い国だと思います。世界で2番目に観光客が多い国ですから、ホテルや交通などのインフラも観光業を基点に発展していると言えます。近年は建築もスペイン経済の中心となっていましたが、現在は大きな危機の中にあります。今日のスペインは、太陽光や風力といった代替エネルギー産業においても、発展を続けています。

Q6.スペイン企業の知的財産に対する意識はどうですか?
– 意識は高まっていると思います。自らの発明を保護しようという意識は、スペインだけでなく国際的にも高まっていますが、国も中小企業に対してセミナーなどを積極的に行うなど、知財の重要性に対する意識を持たせる努力をしています。知財保護に最も力を入れている産業としては、商標でいえば金融業のSantanderやBBVAといった大手銀行ですね。またスペインの繊維製品メーカーZARAも商標に力を入れています。特許に関して言えば、石油会社のRepsol、電気通信業界ではTelefonica of SpainやVodafone Spain、自動車ではSeatなどが挙げられます。製薬会社や化学品メーカーも知的財産保護には積極的です。

Q7.スペインの企業は一般的にどのように知財を扱っていますか?
– 多くの企業が私たちのような知財の専門家に仕事を依頼する形です。自社内に知財部門を持つ会社でも同じです。ただ、いわゆる多国籍企業と言われるような会社にしか知的財産部はないと思います。

Q8.欧米や日本のグローバル企業は、スペインでの知的財産保護に積極的ですか?
– もちろん積極的です。 ここ何年かは、スペインはEU加盟国の中でも経済的に最も成長している国の1つでしたし、多くの外国企業が投資し知財保護を行ってきました。尚、スペインはEPCのメンバーなので、スペイン特許の約9割は、EP経由で権利化されたものです。

Q9.スペインにおける知財教育について教えてください。
– 産業財産権分野での独自の学位はないので、法学の中で教えられるのが一般的です。大学で法学あるいは化学や工学といった技術分野を学んでから、知的財産を専門にしていくパターンが最も多いと思います。大卒の人向けに専門家コースや修士課程を提供している学校もたくさんあります。

Q10.スペインにおける知財分野での資格制度について教えてください。
– 弁理士になるには、大卒以上であり、全ての知財分野における学科試験と実務試験に合格する必要があります。また、外国語、つまりスペイン語以外の言語の試験に受かる必要があります。英語は必須となっていて、それ以外にも話せる言語があれば、なお良いです。
– それから、弁理士の試験は毎年必ず実施されるわけではありません。スペイン特許庁が状況を見ながら、もっと弁理士資格を持っている人が必要だと判断したときに実施されます。従って勉強中の人は、試験が受けられる機会を待つことになりますね。ちなみにこれはブラジルでも同じです。

Q11.なぜスペインの弁理士試験には英語の試験も含まれているのでしょう?
– 弁理士はヨーロッパ諸国をはじめ、様々な国のお客様とやり取りをしますから、英語で特許や明細書についてのやり取りができる必要があるというのがスペイン特許庁の考えだと思います。

(サービス、南米とのネットワークについて)
Q12.貴社について少し教えてください。スペインだけでなく、中南米の国にも事務所を構えていらっしゃいますが、それによるメリットなどを教えて頂けますか?

– 弊社は100%スペイン資本の知財サービス会社で、スペイン語圏とポルトガル語圏の知的財産に特化しています。おっしゃる通り、事務所を構える多くの南米の国でも私たちは発展を遂げてきました。どのブランチに仕事を依頼して頂いても、マドリードのヘッドオフィスと同じ仕事の手順と品質を提供します。マドリードオフィスを中核に据えたサービスで、全てのスペイン語圏の国で提出できる翻訳明細書を作成するのもマドリードオフィスですし、お客様とのやり取りも全て、マドリードを介して行っています。つまりお客様は私たちが事務所を持つ国において何ヶ国出願を持っていたとしても、マドリードオフィスとのやり取りだけで手続を済ませることができ、追加費用もかかりません。
– それから、ご存知のようにブラジルはスペイン語圏ではありませんが、弊社を介してスペイン語圏にも出願をするのであれば、ブラジル出願用のポルトガル語訳明細書も1から作り直す必要がありません。スペイン語の明細書を基にポルトガル語の明細書を作るので、コストが抑えられます。
– また、このネットワークを良好な状態に保つため、私自身定期的に各事務所に足を運ぶようにしています。

Q13.南米のポテンシャルについては、どう見ていらっしゃいますか?
– 非常に高いと思います。急成長していますね。例えばブラジルやメキシコやアルゼンチンでは、特に電気通信や医療の産業で急成長が見られますし、チリも経済的に大きく成長しています。それにブラジルは2014年にはサッカーのワールドカップ、2016年には南米初のオリンピック開催が控えていますから、経済成長やインフラ整備が期待できますね。

Q14.では最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。
– このような機会を通して他国の知財専門家たちや実務について学べるのは非常に有効だと思います。全てのユーザーの方に、インタビューを読まれることをお勧めしたいです。そして微力ながらお客様のお役に立てれば嬉しいと心から思っています。

(記事担当:特許部 横倉)

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Riguiero氏
右側はブラジル弁理士のFreire氏

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