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2010.03.08

【世界の知財プロに聞く】 第12回 DAVID COCHRANE氏(南アフリカ 特許弁理士)

世界各国から毎日のようにNGBを訪れる知財プロフェッショナルたちの素顔に迫るコーナー。

第12回ゲストのDAVID COCHRANE氏は、2010年にワールドカップの開催を控え経済成長への国際的関心が集まる南アフリカ共和国出身の優しい笑顔が印象的な特許弁理士。DAVID COCHRANE氏のNGB訪問時、南アフリカの知財事情についてお話を伺いました。
※DAVID COCHRANE氏はSpoor & Fisher所属

Q1. 知財業界に入った理由を教えてください。
科学に関心があったので、出身地のヨハネスブルクにあるウィットウォータースランド大学では化学を専攻しました。 しかし大学での講義はとても興味深かったのですが、自分自身が将来何をしたいのかは正直ぼんやりしていました。そんな折、弁護士をしていた父から特許弁理士になることも将来の選択肢に入れてみてどうかとアドバイスを受けたことが直接のきっかけになったと思います。

その後大学を卒業し新たに3年間、特許弁理士になることも考慮に入れながら大学で法律を専攻しました。そして心から科学技術だけでなく法律にも携わりたいと思った時、特許弁理士になる決意をしました。

ちなみに南アフリカにおいて特許弁理士として活動するには、理学もしくは工学の学位(3-4年)と法学の学位(2-3年)を取得し、特許法律事務所で1~2年間補助者として勤務し、更に南アフリカ特許庁により行なわれる筆記試験に合格する必要があります。         つまり、南アフリカにおいて弁理士資格を取得するには最低6~7年程度かかることになります。

Q2. 今の働き甲斐は何でしょうか?

医薬・生化学・石油化学製品・火薬・農薬分野の特許出願および種苗の登録を担当していますが、最先端の研究者と互いに刺激しあい発明をより良い権利へと育てていくことを心から楽しんでいます。特に、担当する発明が日本、アメリカ、ヨーロッパ等の先進国で権利化された時は本当に嬉しく思います。

また南アフリカ特許庁は特許に関して無審査主義を採用しております。たとえ特許が登録されていたとしても登録されたクレームに有効性がないと権利行使はできません。そこで権利行使可能性を高めるようクレーム・先行技術等を綿密に分析し、必要に応じて自発補正の提案を行ないます。このような提案ができた時も満足感を感じる時です。

また海外の代理人や同業者と交流できることも励みになっています。特に、所属事務所の『アフリカ大陸におけるリーディングファームになる』とのビジョンの下、アフリカ大陸における弊所各国駐在所や現地代理人などとのネットワークを活用し、アフリカ諸国そしてOAPI・ARIPO等における権利化に携われることも興味深いことだと思っています。

ちなみに、OAPIはフランス語圏の国々が中心に加盟するアフリカ知的財産機関で、ARIPOは英語圏の国々が中心に加盟するアフリカ広域知的財産機関になります。OAPIは特許・意匠・商標ともによく整備されているとしていると思います。しかしARIPOに関しては、いくつかの加盟国において商標法の改定が行なわれていないため、現時点において商標取得はお奨めができない状況かと思います。特許・意匠に関しては問題ないと思います。
   
Q3. 南アフリカの産業について簡単に教えてください。
南アフリカは生産性が高く工業化された先進国的な側面と資源に頼る発展途上国的な側面を有しており、主な産業は鉱業(資源産業)・製造業・化学製品・農業そして観光業になります。繊維産業・金融サービス業も近年著しい成長を示しています。またサッカワールドカップが2010年に南アフリカで開催され、インフラ投資による大規模な経済への波及効果が見込まれています。

Q4. 南アフリカにおける知財保護の現状を教えてください。
権利取得に積極的な国内産業は鉱業(資源産業)・化学産業で、ソフトウェア関連産業の出願も近年増加してきております。しかし南アフリカにおける国内企業は商標に対して高い意識を持っていますが、研究・開発の成果を適切に保護するための特許出願はまだ十分に行なわれていないのが現状だと思います。

一方欧米・日本の海外グローバル企業は南アフリカでの知財保護に積極的で、特許に関してはPCT出願経由の出願が多いと思います。また商標と意匠出願も積極的だと思います。

知財保護に対する意識としては、模倣品(主に輸入品)の問題はありますが、南アフリカの国内企業は権利行使に直面した際には知財を尊重する傾向にあると思います。

Q5. 南アフリカでの知財管理はどのように行なわれていますか?
南アフリカの多くの国内企業では、知財は法務部内の社内法律専門家により管理されています。資源会社大手SASOLなどの南アフリカの大企業だけが社内に特許弁理士・商標弁理士を雇用し、知的財産部を保有しています。但しその数は南アフリカ全体でまだ2、3社あるかないかというところだと思います。また南アフリカの大学TLOは研究成果の保護・商業化に成功してきており、特許出願に関しては特許事務所を利用しています。

Q6. 南アフリカの知財教育の現状はどうなっていますか?
法学部に属する学生は知財のコース・講義を履修できます。また南アフリカの大学の多くは、知財の修士課程や研究生向けのコースを開設しています。これらのコースは南アフリカ特許庁や南アフリカ知的財産研究所(SAIPL)の後援で行なわれています。

Q7. この機会を利用して読者にメッセージをお願い致します。
アフリカは大変チャンスのある大陸です。アフリカの資源への関心は非常に高いですが、現在行われている開発事業による発展にも関心を持って欲しいと思います。アフリカは巨大な潜在市場です。グローバル企業にはこのチャンスを逃さないで欲しいと願っています。 

(記事担当:特許部 渡邊)
免責事項
このウェブページに含まれる情報は海外知的財産専門家により提供されたものであり、情報提供のみを目的としております。NGBは正確な訳文を提供することに努めておりますが、情報の内容を保証するものではありません。

OAPI加盟国(赤)/ARIPO加盟国(黒)   

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