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2010.04.14

保刈宏之

■特許/当事者適格/権利移転の証明懈怠による適格性の認否

(Tyco Healthcare Group LP v. Ethicon Endo-Surgery, Inc., CAFC, 12/7/09)

 原告には、訴え提起の当事者適格を証明する責任があり、特許侵害の当事者適格を主張するためには、拘束力のある権原を有することを訴訟の当初に証明しなければならない。
 本件の争点特許に関する所有権の帰属によって、本件訴訟の当事者適格が認められるが、その帰属は、特許権移転に関する契約の具体的な句の正確な解釈に依存し、デラウェア法に基づいて当該契約は適用されるが、契約を解釈するとき、当事者の意図を実現させる必要がある。争点となる契約上の句は、「係属中の訴訟に関連する(related to pending litigation)」の部分であって、争点特許が係属中のいかなる訴訟にも「関連する(related to)」ならば、当該特許は移転されないとしており、その場合は、譲受人であると称する者による本件訴訟の当事者適格が認められないが、当該特許が係属中の訴訟に関連しないならば、当該特許の所有権は移転し本件訴訟の当事者適格が認められる。
 当該契約は、「係属中の訴訟に関連する」の句を明確に定義していないが、通常は、「関連する」の意味するところは、あるものが幾分かの関係を有しているか、または別の一方との結びつきがある場合をいう。契約当事者間で狭義の意味に使用することもできるが、当裁判所に対して、契約当事者が意図したものは、「関連する係属中の訴訟」という句に関する通常の広い理解以外に示唆するものはなく、除外資産条項のその他の項は外観では広義の方式に「関連する」の用語を導入している。当事者適格を証明する立場上、争点特許が特定の訴訟に関連していないことを証明しなければならないが、記録によって可能となる当該訴訟の特定ができない状況にあり、当事者は現実にこの点を懈怠している以上、地裁は、正当に訴えを斥けていることになる。
 反対意見は、多数意見が新理論を提示しているとして、存在せず主張もされていない請求が、関連しない主題に関する後に認可された特許を取り込むと、いかようにして「裁判所が合理的に判断しうる」のか、まったく確かに不明であるとした。この理論は、地裁によって言及されていないし、いかなる当事者によっても求められておらず、当事者適格を否定された者には、応答する機会さえなかった。当事者証人の証言とそれを争わないところによって、本件争点特許は、係属中のいかなる訴訟にも関連するものではなく、関連する訴訟は、和解契約の日に係属中であったと看做されるが、争点主題は、当時の訴訟におけるいかなる主題にも関連するものではなく、現在主張されている特許は、和解契約において認められた免責にかかる製品にも関連しない以上、当該特許は、譲渡契約による移転にしたがって、正当に移転されたものと判断されるから、裁判所による当事者適格の否定は、法律上および事実上、支持のないものであるとNEWMAN判事は反対意見を結んだ。

事実概要
 本件訴訟に関して争点となっている三件の特許は、米国特許第6,063,050号、同第6,468,286号および同第6,682,544号であり(以下、争点特許)、その対象とする医療機器は、超音波エネルギーを用いて手術の際の切開および血管の凝固に利用される。三件の特許は手続係属中であるが、当該発明者達は、各々の権利をU.S. Surgical Corporation(以下、USSC)またはMisonixのいずれかに譲渡した。Misonixは、先に、USSCに排他的許諾権ならびに関連特許の技術主題に関するすべての発明および特許に関する訴え提起の権利を認めていた。ゆえに、1999年3月の時点では、争点特許を実施するのに必要なすべての権利は、USSCに帰属していた。
 1999年4月1日、USSCは、二件の契約を締結した。すなわち、「Contribution Agreement」と「Settlement Agreement」である。Contribution Agreementは、USSCとKendall LLP(以下、Kendall)によって締結された。Contribution Agreementによって、USSCがKendallに対して譲渡、移転および交付することに同意した対象は、1999年4月1日現在で存在するすべての資産、所有財産および営業であって、「除外資産」にあるものを除くものとした。特許を含む移転資産から除外されるものは、「USSCが関与する係属中の訴訟に関連するすべての特許および特許出願」であるとし、すなわち除外資産条項に記載されたものであるとした。Contribution Agreement第4.21条の記載の一部は、「係属中の訴訟、もしくはUSSCによる、またはそれに対する提訴の懸念が存在し、あるいはUSSCが関与する訴訟は存在しない」、但し、「表4.21に記載のもの」を除く、としている。Contribution Agreementの締結後間もなくして、Kendallは、その名称を変更してTyco Healthcare Group LP(以下、Tyco Healthcare)とした。ゆえに、Contribution AgreementによってKendallに移転されたいかなる権利も、現在は、Tyco Healthcareによって所有されている。
 Contribution Agreementが締結された同じ日に、USSCとEthicon Endo-Surgery, Inc.(以下、Ethicon)は、Settlement Agreementを締結して、両者間の「五件の係属中特許訴訟」と何件かの抵触審査手続を解決する目的とした。Settlement Agreementは、Ethiconによって製造または販売され当時現存した特定の製品に対する侵害責任の免責を認めた。USSCとEthiconは、さらに、契約に列挙した訴訟について、確定力のあるものとして取り下げることに同意した。現時点では、EthiconとTyco Healthcareは、本件訴訟の被疑侵害製品群が、Settlement Agreementによって免責された製品群と同一であることに同意している。さらに両当事者が同意している点として、被疑侵害の現製品は免責されていないのであって、それらは、Settlement Agreementの発効日である1999年4月1日の後に製造または販売されたからであるとした。
 2004年10月、Tyco Healthcareは、Ethiconに対する本件訴訟を開始し、争点特許の侵害を主張した。証拠開示手続の後、事実審が2008年12月にArterton判事の下で開かれた。Tyco Healthcareが召喚したその最初の証人は、Steven Amelio氏であり、Tyco Healthcareの副社長として、規則第30条(b)(6)の証人となった。Amelio氏の反対尋問の際、Ethiconは、Tyco Healthcareの主張する特許の所有権について初めて争った。
 翌日の土曜日に、Tyco Healthcareは、Contribution Agreementを作成して、USSCからKendall(現在の名称はTyco Healthcare)に対する1999年の特許権移転に関することであるいわれる内容を書面化した。その月曜日には、Amelio氏は、証人として再喚問され、USSCからKendallに移転された争点特許の所有権について証言した。
 Tyco Healthcareによる立証段階の最後に、Ethiconは、当事者適格の争点に関する法律問題としての判決を求める申立てを行ない、Tyco Healthcareは、争点特許を所有する者ではないと主張した。地裁は、Ethiconの申立てを保留したが、最終的にはそれを認めて、確定力のない決定として事件を却下した。
 Tyco Healthcareは、適時控訴し、Ethiconは、適時交差控訴した。連邦巡回区控訴裁判所は、裁判所および裁判手続に関する法律第1295条(a)(1)に基づいて、裁判管轄権を有する。

認容

判旨

以下、I.P.R.誌第24巻3号参照

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