IP NEWS知財ニュース

  • 知財情報
  • アーカイブ

2010.06.15

保刈宏之

■意匠/第171条/機能性の要素を多く含む意匠の類比判断

(David A. Richardson v. Stanley Works, Inc., CAFC, 3/09/10)

 ある意匠が機能と非機能の要素の双方を含むとき、クレームの範囲は、当該特許に示された意匠の非機能的な特徴を特定するように解釈されなければならない。本来、意匠特許は一般の特許とは異なり、物品の装飾的な意匠に保護を限定しており、特許された意匠が主として機能的であって装飾的ではない場合には、当該特許は無効である。意匠が装飾的な特徴も含む場合には、意匠特許として付与される権利の範囲は、それらの特徴だけに限定され、クレームされた物品の機能的な要素のいかなるものにも及ばない。
 本件特許の意匠が多機能の工具であって、機能的な構成要素を有し、包含するいくつかの要素は純粋に実用性がその源になっている。要素としての取っ手、ハンマーの頭部、あご、およびバールといったものは、それらの機能上の目的によって決定づけられている。本件特許権者は、地裁が当該意匠の機能的な特徴と装飾的な外観を分離して、意匠を全体として考慮していないと主張するが、意匠特許は一般的にその図面に基づいてクレームされるため、地裁クレーム解釈も、描かれている設定に依拠して装飾的な特徴にハイライトしている。
 意匠特許の侵害は事実問題であって、特許権者が証拠の優越性によって証明しなければならない。意匠特許の侵害如何を判断するためには、「通常の観察者のテスト」が唯一のテストとなる。通常の観察者であり先行技術の意匠に明るい者が、被疑製品と特許意匠とが同一であると信じ込むように欺かれることに関して、特許権者は証明しなければならない。通常の観察者のテストは、特許された意匠が多くの機能上の要素を導入している場合にも同様に適用される。侵害を評価する際に判断することは、意匠全体における類似性の結果、欺瞞が生じているかどうかであって、分離された装飾的な特徴の類似性によってではない。侵害は、被疑製品がクレームされた意匠であると欺くように類似する外観を創出しているのでない限り、認められることはありえない。
 先行技術に明るい通常の観察者の見方からして、被疑製品の全体的な視覚的効果は、本件特許意匠とは著しく異なり、流線形の視覚的なテーマを有して意匠全体を流れており、先細のハンマー頭部、流線形のバール、丸みのある三角形の首、滑らかに曲線を描く取っ手といった要素を含んでいる。工具の機能上の要素を無視して、二つの意匠は確かに相違する。被疑製品の各々は、本件特許意匠と並べて比較すると、この流線形のテーマに関する全体的な効果が、両者を著しく異なるものにしている。全体的には、被疑製品は、明らかにより丸みを帯びた外観をしており、被疑製品が、本件特許意匠には認められえない全体的な効果を実現している以上、市場を混乱させることはありえないとした地裁に明らかな誤りはない。

事実概要
 David A. Richardson(以下、Richardson)が所有する米国意匠特許第D507,167号(以下、’167特許)は、多機能の大工工具を対象とする意匠をクレームしており、従来型のハンマーにスタッド・クライミング用具とバールを組み合わせている。その工具は、「Stepclaw」として知られている。’167特許にかかる唯一のクレームは、本件意匠特許のFIG.1とFIG.2に図示される工具の装飾的な意匠をクレームしている。
 Stanley Works, Inc.(以下、Stanley)は、建設用工具を製造販売している。2005年にStanleyが米国市場に投入した工具の製品ラインがあり、そのシリーズ名を「Fubar」とした。Fubarは、5種類の異なる型で販売され、用途は、大工用、解体用、および建設作業用となっている。Stanleyが出願した基本となるFubar意匠は認可され、米国意匠特許第D562,101号(以下、’101特許)となった。その工具の5種類のすべての型は、同一の基本となるFubar意匠を中心として構築されている。’101特許のFigure 1とFigure 5は、Fubar意匠の図による例示である。
 2008年6月3日、Richardsonは、Stanleyに対する訴状をアリゾナ地区連邦地方裁判所に提出し、Fubarの工具は、’167特許を侵害していると主張した。さらに、Richardsonは、Stanleyが、原告との不公正な競争を米国市場において行なっていると主張した。Richardsonの訴状に応答して、Stanleyは、先ず、2008年9月10日に却下の申立を行ない、続いて、2008年9月22日に訴状に回答した。2008年10月22日、Richardsonは、陪審による事実審を求める請求を行なったが、Stanleyは、連邦民事手続規則第38条(b)に基づいて、適時ではないとして攻撃する申立を行なった。これに対して、Richardsonは、陪審審理が規則第39条(b)によって認められるよう請求した。地裁は、Stanleyによる却下の申立を認めて、Richardsonによる規則第39条(b)による申立を拒絶した。Richardson v. Stanley Works, Inc.事件(No. CV-08-1040-PHX-NVW, 2009 WL 383554 (D. Ariz. Feb. 13, 2009))参照。また、裁判所は、Richardsonによる不公正競争の請求を斥けるよう求めるStanleyの申立を認めた。Richardson v. Stanley Works, Inc.事件(No. CV-08-1040-PHX-NVW, 2008 WL 4838708 (D. Ariz. Nov. 06, 2008))参照。2009年4月2日、裁判所は、Richardsonによる特許侵害請求に関する裁判官による事実審理を行ない、Stanleyに有利な非侵害の判決を登録した。Richardson(610 F. Supp. 2d at 1053)参照。裁判所は、その命令において、先ず、そのクレーム解釈の一部として、Richardsonの意匠に関する装飾的な外観と機能的な特徴を区別して、その上で、通常の観察者は、Richardson意匠の機能的な要素を過小評価した後に、Fubar工具のいかなるものも、RichardsonのStepclawと同一であると考えるように欺かれるものではないと判断した。ゆえに、裁判所の下した結論は、Fubarの全体的な視覚的効果に関して、Stepclawのそれと本質的に類似するものではなく、その上、’167特許が侵害されたことはないとした。Richardsonは、適時、裁判所判断に控訴した。連邦巡回区控訴裁判所は、裁判所および裁判手続に関する法律第1295条(a)(1)に基づいて、裁判管轄権を有する。

認容

判旨

以下、I.P.R.誌第24巻5号参照

関連記事

お役立ち資料
メールマガジン