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2014.01.20

【よくあるご質問(FAQ)】 米国特許権利回復に係る中用権について

ご質問:
米国では、特許年金未納による権利失効から権利回復が比較的容易にできるようですが、最近、その権利回復できる期間が実質的に無期限になったと聞きました。特許権者にとっては望ましい制度かもしれませんが、第三者にとっては失効したはずの特許が容易に復活してしまうリスクがあります。あまりにも特許権者に有利すぎませんか?
ご回答
ご質問にもありますが、年金未納による失効について、米国では以前から権利回復の規定があり、米国特許法41条(c)(1)において、年金が未払いの場合でも、所定の手続きによって権利回復できることが規定されています。先の記事の通り、2013年12月18日付でこの規定が改正され、追納期間満了から24ヶ月を過ぎても、未納が故意ではない(unintentional)ことを説明するだけで権利回復ができるようになりました。それに伴い、ハードルの高い手続き(例えば自然災害などの理由で、未納が不可避(unavoidable)であったことを説明)は廃止されました。この点においては、今回の改正は、特許権者にとって有利な改正といえます。

その一方で、上述の権利回復による権利の濫用から第三者を守るための規定として、中用権(米国ではIntervening rightsと呼んでいます)についての規定があります。米国特許法41条(c)(2)において、年金未納による特許権利失効後に第三者がその特許発明を実施し、その後権利が回復した場合でも、実施者に不利益が生じないことが規定されています。すなわち、追納期間終了から権利回復までの間に、第三者が発明を実施した場合には、特許権者はこの第三者に対して権利を行使することができず、第三者には引き続きその特許発明を実施する権利(=中用権)があるとされています。ただし、この中用権が、どの範囲でどの程度認められるかは、個別に判断されるようです。

本記事は、米国特許権利回復に係る中用権について説明していますが、この権利の行使を薦めるものでもなく、内容を保証するものでもありません。個別の案件において、実際にこのような場面に遭遇し、中用権を主張できるかどうかをご検討される場合には、米国特許弁護士にご相談下さい。

(記事担当:特許第1部 鈴木、杉田)

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