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2017.05.18

【中東訪問記2017】 [1] UAE (ドバイ) 税関訪問

NGB商標部では、海外商標情報収集、代理人事務所視察を目的とし、毎年世界各国に視察出張を行っております。本年度第一弾として、2月末~3月初にかけて、UAE(アラブ首長国連邦)最大の都市ドバイと、イラン・イスラム共和国の首都テヘランへ行って参りました。紙面の限りもあり、すべてをお伝えすることはできませんが、印象深い思い出を中心に、当地の空気感をお届けできればと思います。まずは、UAE (ドバイ) 税関訪問からご報告させて頂きます。

UAEのドバイ国際空港までは、成田からの直行便でおよそ12時間。3月初旬でも、日中の気温は30度近くまで上がりますので、春まだ遠かった東京から一転、夏用のスーツに着替えて行動開始です。さて、一言で中東に括られるドバイですが、実際は、我々の先入観と全く違う風景でした。街行く人の大半はインド系の人々であり、UAE国籍者は人口の僅か17%と言われています。また、イスラム教を国教としながらも、外国人が多く住むドバイはイスラム色が薄く、宗教的制約もあまり感じられませんでした。

ドバイは、中東屈指の世界都市および金融センターである一方、ここ数年間模倣品の数が急増しています。今回の訪問は、知財代理人事務所を視察訪問するほか、中東で直面する模倣品問題に対する打開策を模索するためでもあります。急速な経済発展とともに、模倣品の出荷元ランキングでは、中国に次いで世界2位という不名誉な位置付けになっているUAEですが、その出先としては、サウジアラビア、米国、EU諸国のほか、ヨルダン、イエメン、クエート、モロッコといった中東・アフリカ地域もあります。

今回は、クライアント様からのご要望もあり、中東地域の大手ハブ事務所であるSABA IP事務所のセッティングの下で、UAEにおける水際対策の要と言えるドバイ税関を訪問する機会を得ました。面会のアポイントメントをとるのが難しいと言われるドバイ税関ですが、同事務所の長年のコネクションのおかげもあり、ドバイ税関知的財産権部トップ (Director) の Yousuf Mubarak 氏をはじめとする幹部職員達との面談・討議の場が設けられました。

UAEにおける税関当局は2005年に設立され、全国で約3,000人の職員がいます。国境で24箇所の支所があり、また、各首長国にもPORT(通関地)が存在します。学校での知財保護に関する教育や、権利者とのワークショップ(税関職員との勉強会・啓蒙活動)等を定期的に行い、積極的に模倣品問題に取り込んでいる旨、 Mubarak 氏から熱く語って頂きました。

ここ数年間で模倣品問題が深刻化していることで、税関では全ての模倣品を完全に取り締まりきれていない状況は確かにあるようです。権利者は、ワークショップ等への積極的参加を通じて、自社のブランド、商品をより深く理解してもらう努力が重要であり、それにより税関取締りの成功率も高くなるとのアドバイスでした。UAE内での各税関での対応方法が、必ずしも統一されていない点や、言語の問題(ワークショップは、アラビア語で行われる)等、課題もありますが、まずは、商標登録を得て、その後の税関対応は任せてほしいとの、力強いお言葉を頂きました。

議論が白熱する中、あっという間にミーティング終了の予定時間に。Mubarak 氏のスケジュールは非常にタイトで、面会時間も分刻みできっちり決められています。“Together for better protection” とのメッセージが刻まれたドバイ税関特製の記念品を面談参加者に手渡された後、Mubarak氏は、足早に次の会議場へと去っていきました。

ドバイでは、税関訪問の他、今後の発展が期待される知財事務所数か所を訪問してきました。最近は、SABA IP等の古くから現地に根差す事務所ではなく、欧米から進出する事務所が増え、そこで経験を積んだ人材が新たな事務所立ち上げに参画することにより、事務所選定のオプションは増える一方といえます。しかしながら、各所とも一長一短あり、選定の際は色々と考えさせられそうです。その辺のお話は、またの機会にご紹介できればと思います。

(商標部 関口/範)

=>[2] いざ、イランへ! に続く

ドバイ税関エントランス
ミーティング風景
Mr. Yousuf Mubarak (Director) と 関口、範囲

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