IP NEWS知財ニュース

  • 知財情報
  • アーカイブ

2019.02.22

【Cases & Trends】 インド、特許実施報告義務をめぐる論争再燃か - Form-27改正作業放置を非難し、公益訴訟原告が緊急申し立て

「特許庁は法令に基づき義務付けられている実施報告書提出の順守を促し、違反に対しては罰則規定を適用すべき」、として2015年にインド法学者が特許庁に提起した公益訴訟。裁判所(デリー高等法院)は、実施報告の義務を追認しつつも、権利者に要求されている現行の報告書式(Form-27)の曖昧さ/煩雑さが遵守を困難にしているとし、Form-27の見直しを含むルール改正をインド特許庁に要求する判決を下したのが2018年4月。

裁判所命令に従い、ルール改正スケジュールを裁判所に提出し、スケジュール通り、パブコメ募集(3/23/2018まで)、ステークホルダー・ミーティング(4/6/2018)を進めていたインド特許庁でしたが、その後、作業進捗が表に出ない状態が続いていました。2018年分の実施報告に向けた作業が始まりつつある2019年年明け、実情がわかってきました。
1月7日、先の公益訴訟申立人(原告)Shamnad Basheer氏が、「裁判所命令に反し、被申立人(被告)特許庁らが、ルール改正作業を放置している」として、緊急申立(Urgent Application)をデリー高等法院に提出しました。

ここで、インド特許庁が提出したスケジューリングとそれを含むデリー高等法院の判決(4/23/2018)をみておきます。
————————————————————
デリー高等法院(Delhi High Court) W.P.(C)5590/2015
Shamnad Basheer (Petitioner) vs. Union of India & Ors (Respondent)

4/23/2018判決
「…本件訴訟においては、1970年(改正)特許法第146条、2003年特許規則131条およびそこに規定されたForm-27、特許法第122条規定の実施に係るいくつかの問題に関連し、改正の必要性が特許庁によって調査された。具体的には、2018年4月6日にステークホルダー・ミーティングが開催された…。
当裁判所の2018年3月15日付命令に基づき、特許庁からは以下の改正スケジュールが提出された。

改正スケジュール *()内は必要とされる時間

パブリックコメント募集 3/23/2018まで
=> 特許庁ウェブサイト上でパブリックコメント公開 4/2/2018
=> ステークホルダー・ミーティング開催 4/6/2018
=> さらなる意見聴取および特許実施に関する各国運用の研究(1ヵ月)
=> 特許庁による特許規則第31条/Form 27の改正案作成(1ヵ月)
=> 規則31条/Form 27改正案に対する所管当局(Competent Authority)の承認(1ヵ月)
=> 規則31条/Form 27改正案の公報告示およびコメント募集(2ヵ月)
=> 規則31条/Form 27改正最終案の当局への提出(1ヵ月)
=> 法務省及び関連省庁間の審査(2ヵ月)
=> 所管当局による規則31条/Form 27改正の承認(1ヵ月)
=> 予備期間(不測の遅延を考慮)(2ヵ月)

当裁判所は、提出されたこのスケジュールを受け入れる。このスケジュールに沿って、遅滞なく改正作業が進められなければならない。作業が終了次第、特許庁は当裁判所に対しその旨報告するものとする。
以上に鑑み、法の厳格な執行を求める本件申立に対しさらなる手続きは不要と判断し、本件手続はここで終了する」
————————————————————

[Basheer氏の緊急申立て]1/7/2019

Form-27改正作業の進捗への問合せに一切回答なし
申立人Basheer氏によれば、「上記スケジュールに基づき2018年7月6日には所管当局(産業政策・振興局)の承認を得たForm-27改正案の告示とコメント募集がなされなければならない。そこで、7月第一週に改正案状況について特許庁に問い合わせたところ、明確な回答なし。7月11日、18日と続けて状況説明を特許庁に求めるも回答なく、さらに7月29日、8月20日に回答の督促状を送付したが…回答はいまも届いていない」といいます。

Form-27改正作業の進展が見られない一方、特許庁は別のルール改正を進めている
2018.12.4 にDIPP(産業政策促進局)が特許規則改正案の告示、コメント募集をしたが、含まれている内容は早期審査などについて。規則122, Form-27については一切言及なし。

これらは裁判所命令および自らの制約に対する明らかな違反。
・裁判所は、改正作業を2019年3月9日までに完了するよう特許庁に指令すべき
・その他、正義、公正、善意のために必要とみなす命令を下すべき

[デリー高等法院の命令] 1/9/2019
『被申立人(被告・特許庁他)は、2019年2月15日までに回答を提出すること』

本記事作成時点(2/15/2019 11:10am)では、特許庁の回答書情報を得ることはできておりません。

(営業推進部 飯野)

*Basheer氏が提出した緊急申立て書は、同氏が運営するインド知財ブログ”SpicyIP“に掲載されています。
(https://spicyip.com/2019/01/patent-working-pil-update-court-directs-govt-to-file-status-report-within-three-weeks.html)
*1/9命令を含む本公益訴訟の経過・命令・判決はデリー高等法院HP上でも確認できます。
(http://delhihighcourt.nic.in/case.asp)

関連記事

お役立ち資料
メールマガジン