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2019.10.21

【米国トレーニー日記】 第18回: Patent Bar試験(受験勉強および試験当日編)

 NGBでは定期的に米国ワシントンDCの特許事務所にトレーニーを派遣しています。私(篠田)も、2019年5月~11月の半年間の予定で滞在中です。

 前回は、Patent Bar試験の概要および受験申請方法についてご紹介しました。今回は、Patent Bar試験の勉強方法や試験当日の様子をお話したいと思います。

勉強方法
◆資料
・Manual of Patent Examination Procedure (MPEP)
https://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/index.html
・37 C.F.R. Patent Rules
https://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/mpep-9020-appx-r.html
・JPOが公開しているMPEPやCFR等の和訳(https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/mokuji.html
・丸島 敏一 (著)「MPEPの要点が解る米国特許制度解説 第3版」および著者作成のページ
http://www.craft-ip.com/uspat/start
・USPTOが公開している過去問(2002年秋、2003年春・秋)
・mypatentbar.com
http://mypatentbar.com/
・Patent Bar試験のチュートリアル(USPTOのWEBサイトにcomputer-delivered examination tutorialへのリンクあり)

◆期間
・米国プロセキューションを日常的に担当している方なら、3ヶ月程度の勉強期間を確保できれば良いと思います。過去問を解くだけでは不十分であり、MPEPを体系的に理解する必要がありますので、十分な勉強時間を確保することが肝要です。
・日本の特許事務所からトレーニーとして派遣されている方は、日常的にMPEPに触れる機会が多く、事務的な手続きにも慣れ親しんでいるからか、1~2ヶ月程度の勉強期間で合格する方が多かったです。

◆方法
・先ずは、「MPEPの要点が解る米国特許制度解説 第3版」を用いて、MPEPの全体像・概要を理解しました。この際、MPEP原文を参照しながら、英文に慣れるように努力しました。
・MPEPの全体像がぼんやりと分かった後は、とにかく多くの問題を解きました。正解できなかった箇所・理解できなかった箇所は、MPEPを参照することが重要です。本番の試験でもMPEPが参照可能なので練習になります。
・ただし、USPTOが提供するMPEPでは、全ての章を横断して単語検索が可能ですが、本番のMPEP参照ソフトでは、章を選択した後、単語検索を行うことになります。したがって、本番対策のため、どの内容がどの章に記載されているか(FAXや郵便に関することは600番台など)記憶しておくことをお勧めします
・私は、MPEPで先ず章を選択し、単語検索を行う練習を日常的に行いました。
・なお、USPTOの過去問には解答・解説が付属していますが、AIA改正前(Pre-AIA)の法律等に基づくものなので注意が必要です。AIA改正後の法律等に基づくとどのような解答になるか想定しながら勉強を進めましょう。
・本番の問題では出願日や優先日などの記述があり、AIAおよびPre-AIAのどちらが適用されるかを判断しなければなりません。AIA/Pre-AIAの適用の日付(2012年9月16日や2013年3月16日)は覚えておく必要があります。例えば、102条に関しては2013年3月16日以降の有効出願日をもつ出願ではAIAが適用される、PGRやDerivationは2013年3月16日以降の有効出願日をもつ特許・出願が対象である、IPRは全特許が遡及的に対象である、などという知識が必要です。
・私は、問題を繰り返し解き、8~9割を正答できるようになった時点で受験しました。

受験当日
・午前7時にテストセンターに到着しました。予約時の確認メールでは、アポイントタイム午前7時半の30分前にはテストセンターに来場するよう指定されていました。
・到着後、受付にてテスト名称を伝え、ID(パスポート)を渡し、本人確認が行われます。IDを忘れると受験ができません。
・テスト会場には、貸与される鉛筆、白紙の紙、パスポート、耳栓しか持ち込むことができません。バッグや、ポケットの中身(ハンカチなど)、時計、アクセサリー(宗教上のものを除く)は、全てロッカーに預けるよう指示されます。テスト会場によっては非常に寒いこともあるようですので、上着を持っていくことをおすすめします。
・その後、テスト会場手前の小部屋にて、再度本人確認が行われます。ここでは、金属探知機を使い全身をチェックされ、眼鏡や耳栓なども入念に調べられます。
・テスト会場内には、小さく区切られてPCが置かれたブースが30個程度ありました。このうちの一つが指定され、席に着くと、すでに私の名前と試験名が画面に表示されていました。
・15分のチュートリアルが開始されますが、これは上記資料のチュートリアルと全く同じものです。受験する方は事前に確認しておくと、当日、落ち着いて試験を開始することができると思います。このチュートリアルが終了すると、試験が開始されます。
・チュートリアルにも説明がありますが、問題文にはマーカーを付すことができ、解答の各選択肢には取消線を付すことができます。私は、問題文の日付や登場人物などにマーカーを付し、明らかに間違いである選択肢に取消線を付すようにしました。
・また、各問題は「MARK」することができ、50問全ての問題を解いた後、「MARK」した問題のみを再度確認することが可能です。自信のない問題や、後から再確認したい問題を「MARK」すると便利です。なお、私は「MARK」しただけでは、再確認した際に何が論点なのか思い出せないと考え、貸与された白紙の紙に問題の概要などを簡単に記載しておきました。
・午前中の試験(50問、3時間)が終了した時点で、休憩時間の1時間のタイマーが動き始めます。いつ午後の試験を再開するかは受験者の自由です。私は、50分程度、食事とトイレのための休憩をとり、午後の試験(50問、3時間)を始めました。
・午後の試験が終了すると、テストセンターのアンケートを数問答え、その後、すぐに試験の結果は画面に表示されます。不合格の場合は点数が表示され、合格の場合はその旨が表示されます。
・テスト会場から出ると、スタッフから「Well Done!」と言われ、合格の表示がされた画面がプリントアウトされて渡されました。6時間の試験の疲労感と、無事合格できたことの達成感と、様々な気持ちを感じながら帰路につきました。

 この報告が、これからPatent Bar試験を受験する方への一助となれば幸いです。

(記事担当:特許第1部 篠田)

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