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2022.10.07

営業推進部 飯野

【Cases & Trends】速報:IEEEがパテントポリシーを改訂 – SEPをめぐる世界の潮流に合わせた(?)

日本メーカーによるコネクテッドカー向け標準必須特許(SEP)ライセンスの受け入れなど、SEPをめぐる国内報道を目にすることが多くなりました。本コーナーでも、体系的にカバーすることはできませんが、ときどき「これは」というSEPトピックはとり上げてきました。今回も「これは」というものを目にしましたので、早速ご紹介したいと思います。

2022年9月30日、IEEE(米国電気電子学会) Standards Association Board of Governors (IEEE SA BOG)は、同団体のパテントポリシーを改訂したことを発表しました。
“IEEE ANNOUNCES DECISION ON ITS STANDARDS-RELATED PATENT POLICY” (https://standards.ieee.org/news/archive-2022/ieee-announces-decision-on-its-standards-related-patent-policy/)

今回の改訂は、「特許技術に関連するIEEEの標準化プロセスを明確化し、ステークホルダーにより多くのオプションを提供する」を目的とし、以下3つのルールや文書の改訂が IEEE SA BOG全会一致で採択されたということです。 改訂の発効日は、2023年1月1日です。

・IEEE SA Standards Board Bylaws
・IEEE SA Letter of Assurance (LOA) 書式
・パテントポリシー FAQ

ご参考まで、Bylawsから今回の改定部分の一部を抜粋します。

IEEE SA Standards Board Bylaws
6.1 定義
「合理的レート」 …合理的レートを決定するためのいくつかの選択的要素は以下の通り。
「クレームされた発明の機能または必須特許クレームの発明的特徴が、必須特許クレームを実施する販売可能な最小の規格適合実装(smallest saleable Compliant Implementation)における関連機能の価値に対して貢献する価値、<または規格適合実装における他の適切な価値レベル>」
(筆者注:内が追加され、SSPPU以外の要素が検討要素に加わっています)

「必須特許クレームの使用をカバーする既存ライセンスであって、明示または黙示の差止め命令の脅威のもとに得られたものではなく、かつ、その状況と結果として得られたライセンスが当該ライセンスの状況と十分に比較しうるもの」
(筆者注:比較可能なライセンスについて検討する際に、「差止めの脅威によるライセンス」は対象から除外される趣旨の記述が削除されています)
————–

今回の改訂対象になったのは、2015年改訂IEEEパテントポリシーです。
2015年改訂ポリシーといえば、「実施者寄りの内容」としてSEPホルダーなどの不満の声もあったと聞いています。
とりわけ大きな異論を唱えたのが(トランプ政権下の)米独禁当局です。

2020年9月、当時の米司法省反トラスト局メーカン・デラヒム局長は、IEEEの2015年改訂に対して前政権下の反トラスト局が出した「ビジネスレビューレター(BRL)」*を訂正する「補足BRL」を発行し、2015年改訂の問題点を指摘しました。(*日本における公正取引委員会の事前相談制度に相当)
「補足BRL」の概要は以下の通りです。

米司法省反トラスト局 – IEEEの2015年改訂IPRポリシーに対する補足BRL発行
(Business Review Letter, 9/10/2020, Antitrust Div. DOJ)
2020年9月10日、司法省反トラスト局(Makan Delrahim) は、IEEEの2015年IPRポリシー改訂案に対して同年2月2日付で発行したビジネスレビューレター(「2015年レター」)の補足版を発行した。

[背景・理由]
「2015年レターが、しばしば誤って、IEEEの改訂IPRポリシーを是認したものとして引用されている。いまや時代遅れとなった2015年レターを、過去5年間にSEPのライセンシングとSSOのガバナンスに関して進展してきた米国の法と政策*に整合させる必要がある」
*米特許庁(USPTO)、司法省(DOJ)反トラスト局、および国立標準技術研究所(NIST)による「FRAND誓約をしたSEPの救済に関する政策声明」(2019.12.9)において、「SEPに対し差止め救済を制限する特別ルールが認められるような誤解を招いた」2013年政策を撤回

[2015年改訂IPRポリシーおよび2015年レターの問題点]
・SEP侵害に対する差し止め救済を制限している。
・「ホールドアップ」を過度に問題している。いま問題にすべきは「ホールドアウト」
・ロイヤルティ算定ベースとしてSSPPU(最小販売可能特許実施単位)のみを薦めている。最終製品ベースも選択肢とすべき
————–

これを見ると、今回のIEEE改訂が、まるで補足BRLの問題指摘に対応したかのようです。もちろん、補足BRL以外にも欧米の裁判所などが実施者の「ホールドアウト」を認定して差止め請求を認めたり(主に欧州・ドイツ)、SSPPUのみならず最終製品全体をロイヤルティベースとした判断が下されています。

いずれにせよ、今後は5GのSEPライセンスが本格化することもあり、SEPをめぐるトピックがさらに増えてくることは間違いありません。本コーナーでも、引き続き「これは」というものをご紹介してゆこうと思います。

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