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2013.08.16

【世界の知財プロに聞く】特別編 Wilfried Peguet氏(フランス・欧州弁理士) 後編

前回に引き続き、フランスのIPSILON事務所に所属するWilfried Peguet氏のお話を紹介します。
Q4. フランスの知財教育について

Q4-1. フランス弁理士、及び欧州弁理士になるためにはどうすればよいですか? 知財業界で働く方々は、特別のバックグラウンドをお持ちですか?

知的財産分野における資格を得るためには、まずは”CEIPI”*で知財に関する修士学位を取得する必要があります。その後、3年以上の実務経験を積み、2つの試験をそれぞれ受ける必要があります。 2つの試験とは、欧州弁理士の資格を得るための欧州の資格試験、及びフランス弁理士の資格を得るためのフランスの資格試験です。 CEIPIで修士学位を取得する前に、科学分野における修士号、あるいは博士号を取得しておいたほうがよいでしょう。

*“CEIPI”: ストラスブールにある、ロバートシューマン大学法学部の国際的な知財研修センター

Q4-2. フランスの大学では知財に関する講義はありますか?

エンジニア系グランゼコールでは、知財の基本に関する数時間の講義があります。 一般的な大学では、知財コースはあまり設けられていない印象があります。

Q4-3. フランスの特許事務所は企業や大学からトレーニーを受け入れていますか? 逆に、特許事務所の方が企業や大学に出向く機会はありますか?

知財に関する修士学位の取得前、あるいは取得中の人々を知財分野のトレーニーとして迎える特許事務所や企業はあります。
一般的には、科学分野における修士号、あるいは博士号を取得したすぐあとに、知財に関する修士学位を取得します。 その後は、駆け出しのIPエンジニアとして、経験豊富な知財弁護士の指導の下、初仕事をすることになります。 そして、欧州、及びフランスの資格試験を受けることになります。
なお、特許事務所と企業間の転職はそう難しいことではありません。

Q5. 欧州単一効特許、及び統一特許裁判所について

Q5-1. 欧州単一効特許及び統一特許裁判所について簡単に教えて下さい。

欧州単一効特許とは、欧州連合(EU)内で「単一の効力を有する欧州特許」のことです。
欧州特許庁(EPO)での審査手続きには変更がありません。 欧州特許の発行の段階で、出願人は初めて単一効特許の取得、あるいは現行の手続きと同様に各国毎の有効化手続きを行うかを選択することになります。 すなわち、欧州単一効特許は「従来型」欧州特許と共存することになります。
統一特許裁判所(UPC)は、統一特許裁判所協定に署名していない国を除く全てのEU参加加盟国における侵害訴訟を、包括的に裁く権限を有することになります。 しかしながら、このような性質上、第三者が欧州単一効特許を一つの無効訴訟で潰すことも可能となります。 最終的には、統一特許裁判所は「従来型」欧州特許を裁く権限も有することになります。 統一特許裁判所が掲げる目標は、EU全域にまで及ぶ質の高い決定を少ない費用で行うことです。

Q5-2. 欧州単一効特許に期待することは何ですか? 欧州単一効特許は、フランスの産業界・知財業界にどのような影響を与えると思いますか?

日本やアメリカなどでは、単一の言語並びに単一の司法の下で、単一の特許保護がなされています。 欧州における単一効特許の導入により、日本やアメリカなどの市場に対して対抗しやすくなるのではと考えます。
また、翻訳費用の減少や単一の特許年金、簡略化された実施体制は革新的な企業の支えとなり、フランスやヨーロッパ域内での特許活動の活性化に大きく貢献することでしょう。 特に、中小企業に対して顕著な影響を及ぼすことが期待されます。
統一特許裁判所の中央部がパリに設置されることにより、知財戦略における欧州内での重要な立場をフランスが担うことになるのではと考えます。

Q5-3. パリに統一特許裁判所の本部が設置されることになりましたが、これについて一言お願いします。

統一特許裁判所は第1審裁判所及び控訴審裁判所によって構成されます。 第1審裁判所は、中央部、地方・地域部によって構成されています。 中央部の本部はパリに設けられ、特定の技術分野に特化した支部はロンドンとミュンヘンに設けられます。
パリに中央部の本部が設けられることにより、フランスのビジネスに大きな弾みがつけられ、また、現在審査の中心として位置付けられているミュンヘンのように、欧州における権利行使の中心としてパリが位置付けられることが期待されます。

Q6. その他・メッセージ

Q6-1. フランスでお勧めの観光地を教えてください。

フランスには、日本と同じように素晴らしい場所がたくさんあるので、答えるのが難しいですね。
パリ市内だと、エッフェル塔、モンマントルやシャンゼリゼ通り、ルーブル美術館、ノートルダム大聖堂でしょうか。

Q6-2. フランスではどんなスポーツが盛んですか?

1998年にフランスがワールドカップで優勝したこともあり、フランスで最も盛んなスポーツはサッカーです。テニスも人気があり、毎年春に全仏オープンが開催されます。
近年では、ラグビー人気も高まっています。

Q6-3. お勧めのフランス料理はありますか?

おいしいフランス料理やすばらしいワインが多すぎて選ぶのが難しいです。
私は、お店を調べるときに下記のウェブサイトを使うことが多いです。
(http://www.lefooding.com/restaurant/)
パリやリヨンではお勧めできるところがたくさんありますよ!

Q6-4. 趣味は何ですか?

昨年まで“Vovinam Viet Vo Dao”というベトナムの格闘技をしていたのですが、怪我をしてしまい、やめなくてはならなくなりました。今では天気のいい日にジョギングをしています。
パリでは美しい公園がたくさんあるのでジョギングが人気です。いつもはパリ南東部にある私のアパートメントの近くを走っています。
また、私は旅で新しい都市や文化にふれることが好きです。昨年一年間で、休暇中に、ヨーロッパだと、イタリア、スペイン、リトアニア、マルタへ、またヨーロッパ以外だと、アルゼンチン、モーリシャス諸島へ行きました。
次は8月に、イタリア南部のサルデーニャという島へ行く予定です。
もちろん日本にも2回行きましたが、残念ながら仕事関連でした。

Q6-5. パリで日本文化を感じられる場所や日本食が食べられる場所はありますか?

私のお勧めは以下の場所です。
<日本料理店、居酒屋>
Japanese-style restaurant, Isakaya
– Izakaya Lengué : 31 rue de la Parcheminerie, 75005 Paris
– Michi Restaurant (Sushi/Sashimi): 58 bis rue Sainte-Anne, 75002 Paris
– Guilo Guilo Restaurant: 8 rue Garreau, 75018 Paris
<日本茶のお店>
Tea shop
– Thea House Jugetsudo: 95 rue de Seine, 75006 Paris
<日本のパン屋さん>
Japanese bakery
– Aki Bakery : 16 rue Saint Anne, 75001 Paris
<日本庭園>
Japanese Garden
– Japanese Garden of Albert Kahn in the West Part of Paris: 10-14 Rue du Port, 92100 Boulogne-Billancourt,

Q6-6. 読者の方へメッセージをお願いします。

2013年3-4月にかけて温かく私を迎え入れてくれたNGBのチームや日本のお客様全員へ感謝の意を述べたいと思います。NGBとIPSILON、そして日本のお客様とIPSILONの絆を深めることに貢献することができ、素晴らしい経験ができたと感じています。私は日本で最も勢いがある事務所のうちの一つに参加できたことを誇りに思っています。毎年秋にNGBへ出張するときに会えることを楽しみにしています。
機会があれば、私たちの事務所にも是非立ち寄って下さい(http://www.ipsilon-ip.com/en/)。

ここまで読んで頂きまして、ありがとうございます。
過去のシリーズでは、ブラジルオーストラリアシンガポールインドフィリピンタイアメリカ合衆国アラブ首長国連邦イギリスインドネシアスペイン南アフリカイタリアベトナム、といった国々を紹介していますので、興味のある国がありましたらご一読下さい。
ここにない国々についても、今後是非皆さまにご紹介できればと考えております。

(記事担当:特許第1部 杉田 秀、田中 康太郎、長谷川 典子)

パリにあるIPSILON事務所

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